* 快斗くんの工藤新一観察日記

不定期更新の予定です。
快斗くんが性格悪かったり新一さんがあほうだったりします。
見難くてすみませんが、下へ下へと付け足してゆきます…。





11/1-15 11/16-30 12/1-15 12/16-31 end



マフラー  2005-12-16 (火)



 改めて見ると工藤の格好は寒そうだ。気温の落ちてきたこの時期にブレザーしか着ていないのだ。せめて中にセーター着たりしろよ と言っても持ってきてないと言う。しょうがないから、俺のを貸してやった。シャツの上に長袖のグレーのカーディガンを着せて、首元にはマフラーをぐるぐる巻いてやる。よし。大分温かそうだ。
 工藤はマフラーをじっと見て一呼吸置いてから、俺に サンキュ と言って家を出た。俺も少し後にここを出る。その時は学ランだ。俺は丈夫だからいいんだ。





ハートビート  2005-12-17 (水 )



 無心だった。マジックの練習中は無心でいることが一番大切だと親父が言っていた。
 だが工藤…
 お前が裸にタオル巻いただけの恰好で出てきたらそれも儘ならないだろうが…!
 こちとら敵であることを忘れてお前に癒されたりムラムラドキドキさせられてちょっぴり危険な道を歩み始めているんだぞ。それを助長する様な真似しやがって。
 風呂場の電気が切れてる?ああ、今すぐ変えるさ。だから服着て待ってろ!
 は?面倒だって?マジで押し倒すぞこのやろう!

 その後、俺はマジックの練習を中断してテレビをつけたのだった。





テスト  2005-12-18 (木)



 期末テストがあったらしい。
 実は俺も数日前にあったのだが、今更勉強する事もなくて普段どおりに生活していた。それは工藤も同じだったようで、帝丹でも少し前にテストがあったのだ。どうしてそれを知ったかと言うと、工藤が珍しく机にノートを広げているからだ。何をしているのかと思えば、テスト後に集める(問題集を解いた証拠とも言える)ノートを書いているのだと言う。やってねぇのかあんた…って俺もだっけ。
 という訳で俺も工藤と並んでシャープペンシルを走らせた。いつもは先生に急かされても出さないのだが、偶にはやってやってもいいだろう。
 きっとこれが共同生活始まって以来初めての学生らしい時間だ。

 終わった後で鍋をして、例の如く同じベットで就寝。
 最近の工藤は自分の部屋を必要最低限しか使ってないような気がする。





そうだった  2005-12-19 (金)



 もうすぐクリスマスだな。
 夕食を食べている時、何の脈絡もなく工藤が呟いた。そうだな。と言うと、俺ここに居てもいいのか? と聞かれた。俺の様子を窺うように躊躇いがちに。
 これは恐らく、俺が女を連れ込むのでは?といらぬ気を遣っているのだろう。今まで俺が休みも学校帰りもここに居るのを見ていてどうしてそんな発想が出るかな。ちょっとからかってみるか。
 家でどうこうすることないから気にすんなよ。24日はどっか他所に泊まるからさ。
 途端に工藤の顔がみるみる曇って、顔を背けられてしまった。そっぽを向いたまま あっそ と返されて、慌てて 冗談だよ! と言ったがそれから暫く工藤の仏頂面は直らなかった。
 俺彼女なんていないから二人で寂しく飲もうぜ!とか、今日はお前の好きなビーフストロガノフだぞ!(贅沢なやつ…)とか言って愛想を振り撒いていた俺は傍から見たらさぞ滑稽だったことだろう。
 機嫌の直った工藤が じゃあまたワイン持ってくるなv と言った時俺にある記憶がフラッシュバックした。ワイン!ってそれやべーよ工藤さん!一度間違って頬ちゅうなんぞしてる俺だ。イヴに清水の舞台から飛び降りたくなったらどうすんだよ!?
 俺の苦悩など知らずに工藤はチリ産のにしようか、赤か白どっちがいいか、などと浮かれ気分を振り撒いている。
 なんであんたワインが好きなんだよ…誘惑癖があるなら飲むなよ…
 勘弁してくれ。





嘘つき扱いだ  2005-12-20 (土)



 今日は珍しく二人とも其々用事があり外出した。それがすべての原因だ。
 家に帰ると鍵が開いていた。開けた人物は工藤以外いないはずなので、早かったなと声をかけながら中に入った…のだが…
 中では工藤がすすり泣いていた。
 俺はすぐさま工藤に駆け寄った。何なんだ?俺の顔を見るなりまたボロボロと泣き出してしまう。だから何なんだよ!?泣くなよ!さっきから心臓がすげ痛いんだよ!
 膝頭に額をつけて俯いてしまった工藤の小さい頭を撫でる。肩が小刻みに揺れていた。
 どうしたんだよ?なるべく優しく聞いた俺に返ってきた声は酷く低かった。
 嘘つき黒羽
 俺の通り名が嘘つきの如く言わないでくれ…って何で俺が嘘つきになるんだ?お前は俺の最大の秘密であるキッドの事まで知っているだろ。今更何を隠す必要があるってんだ。
 暫く黙って(絶句とも言う)いると、工藤がぼそりと呟いた。
 今日お前の彼女見た
 …は??
 口を開けたまま、俺は今日の行動を振り返ってみた。ああ、成程。青子だ。工藤は青子を彼女と勘違いしたのだ。早とちりもいいとこだ。しかしそれで泣かれるって何だか…いや!やめよう深く考えるのはその方がいいぞ俺!
 いたた、まだ心臓がじくじく痛む。何かの病気か?

 夕飯を食っている間工藤は黙りこくっていて、やっと喋ったかと思えば自分の部屋で寝ると言う。いつもは勝手に人のベッドに入ってくるこいつがだ。
 風呂は明日の朝入ることにする。
 今夜は俺が工藤を部屋に引き摺りこんで、時間をかけて誤解を解くんだ。





ペットに懐かれている  2005-12-21 (日)



 家の中で移動する度、…工藤が後ろからくっついてくる。
 お前は掃除機か!俺はトイレに行きたいんだ!
 昨日誤解を解くのに一苦労したが、こうも懐かれるのはどうなのだろう。ソファに座れば当然のように隣に座り、飯を作りにキッチンに入れば手伝いもしないのに側にいる。目を盗んで隠れてみた俺を探す姿は、そう、犬。
 きょろきょろする工藤が可哀想になってきて姿を見せると尻尾を振って寄ってくる。
 まぁ、迷惑してる訳ではないが…。
 やっぱり近くにあると少し下にある頭を撫でてしまう。
 ああ、アルファ波だ。





工藤が止まらない  2005-12-22 (月)



 工藤のスキンシップが止まらない。話すときは必ず顔を近づけて下から覗きこんでくるわ、テレビを見ながら俺の腰に抱きついてくるわで…何だかなぁ。実は俺には小難しい人間を懐柔する素質もあったのだろうか。
 とにかく近くにいると擦り寄る、甘えたがる。そんな工藤は猫に見える。
 撫でると発生していたアルファ波だと思っていたものが、違うものになりそうで恐ろしい。

 今隣でテレビを見ている工藤の顔がすぐ近くにあって、感動もののドラマに瞳が濡れているのがわかる。意外と涙腺が緩いのか。クライマックスに入るととうとう目から涙が溢れて頬に流れ出した。何気なくそれを指ですくってやると濡れた工藤の大きな瞳が俺を捕える。
 そのまま30秒ほどフリーズした。
 肩を掴みそうになった手を抑えた自分を褒めてやりたい。
 その後一緒に風呂に入ると言う工藤の申し出を丁重にお断りし、床に着くとやはり工藤が寒いと言って隣に陣取る。
 シャンプーの香りで癒されたかったが、癒しとは似ても似つかない感情が渦巻いてこの日はなかなか寝れなかった。





俺が止まらない  2005-12-23 (火)



 工藤は抱き心地がいい。そう気付いたのは抱き締めてすぐのことだった。
 学校から帰って来た工藤があまりに寒そうだったので俺は上の行為にでていた。(俺は今日から冬休みだが工藤のところは私立なりの理由で明日かららしい)
 誰か俺を止めてくれ。そう思ってもこの空間には俺と工藤しかいない。越えてはならない一線がとても弛んで低い位置に見える。大体工藤も工藤だ。俺がキッドとわかっても何も言わず、こうして抱き締めると俺の背に手を回して抱き返したりするなんて。貰ってくれと言っている様なものだろ。
 工藤の頭を撫で回しても、悶々とする気分は治らず、ベッドに入ってきた工藤から少し身体を離して眠った。
 問題は明日だ。酒の入った工藤からの誘惑にどう打ち勝つか。
 …勝てる気がしない。





俺には無理だ  2005-12-24 (水)



 この日、街は一段と賑やかだ。寄り添ってショーウィンドウを眺める恋人だち。それに交じって男(それもかなりイイ男)二人で街を歩く俺たち。実は俺たち敵同士なんです。って言っても誰も信じちゃくれないだろう。何と言っても、俺の隣で笑顔を垂れ流す工藤はこの街の誰よりも魅力的なのだから。
 このままじゃいけない。今からでも遅くないから、工藤には家に帰ってもらおう。若しくは、俺が実家に帰るか。最低でも二人きりにならないようにせねば!そうだ最初から野郎二人で過ごそうってのが間違いの元なんだ。工藤と過ごすより女の子と過ごす方がいいに決まって
 宅配便が来た。のでちょっと中断。




黒羽へ
 今まで迷惑かけて悪かったな。家に帰る。  工藤
 

続きは普通のSS方式です→X'mas快新



のんびり  2005-12-25 (木)



 一時はどうなることかと思ったが、一夜明けて俺たちはすっかり落ち着いた。工藤の家でテレビを見ながら飯を食って、他愛もない話を繰り返した。
 俺は肩を抱き寄せて意識的に工藤といちゃいちゃしていた。きっと工藤は俺の気持ちに微塵も気付いていないから、嫌でもわかるようにI Love You波を送り続けているのだ。…未だ気付く気配がないのが残念だ。どうも飼い主にじゃれているペットに見えてしかたがない。俺としてはもう一歩踏み込んでほしいのだが…。
 そうこう考えていると、隣の科学者さんが俺達の前に現れて、盛大な溜息とともにメリークリスマスと言い残してすぐに帰ってしまった。
 その後、 なんでお前志保と面識あんだよ? と工藤が膨れた。可愛かったので理由を説明しながら頬にキスをしてみたら、瞬時に頬が朱に染まる。これで俺のこと少しはわかってくれたかな?



 

とにかくいちゃいちゃ  2005-12-26 (金)



 クリスマスはこれといって何もしないまま過ぎてしまった。勝負は新年か…。
 作戦は引き続き実行している。喋る時はなるべく顔を近づけて、隙あらば身体を触れ合わせた。相手が自分に好意を持っていなければただの迷惑行為だが、明らかな工藤からの好意があるので俺のコレは作戦なのだ。
 今すぐ告白してもいいのかもしれないが、工藤のことだ、俺の予想だにしない答えが返って来そうで少し怖い。まずは、しっかりと俺の気持ちを勘付かせて、工藤自身にも俺をそういう意味で好きなのだと自覚してもらう。それまで暫くは、付き合うのも時間の問題なじれったいカップルのままだ。
 そう思った矢先、
 黒羽って大型犬みたいだな…
 ぴったりとくっついて回る俺に工藤がそんな言葉をくれた。
 俺の作戦は振り出しに戻る、のか?
 固まった俺を他所に、工藤は嬉しそうに俺の頭を撫で回すのだった。



 

作戦変更  2005-12-27 (土)



 昨日の一言で俺は作戦の変更を余儀なくされた。
 今日からは名づけて「色気で落とせ!工藤乙女化作戦」に入る。簡単に言うと快斗くん持ち前のフェロモンで工藤をドキっとさせようという話だ。

@特技(マジック)で落とす
 工藤の前でカードマジックの練習をしている振りをして、小説を読んでいる工藤に近づいた。もう練習は終わったのかと顔を上げた工藤のシャツのポケットからカードを出し、手首を回してそれを一輪の薔薇に変えて工藤に差し出した。キッドの極上の笑みつきで。
 工藤はきゃっきゃとそれは無邪気に喜んだ。喜んだのはいいのだが、俺の放出したフェロモンを跳ね飛ばしてマジックの方ばかりに意識が向いてしまっている。
 …この作戦は失敗だ。

A目で落とす
 単純に工藤と話す時に目力を込めるのだ。女なら大抵一発だが果して工藤はどうなのか?
 結果。1分も持たなかった。…工藤相手に目勝負をした俺が甘かった。
 俺が意気込んで工藤と目を合わせると、まず青い目が俺を吸い込むのだ。俺の浅はかな作戦など見破っているかのような慧眼に圧倒されてしまった。キッドたる俺がこんな簡単に…。そして気付くと俺はいつものように世間話をしていた。
 この勝負は惨敗だ。

 その後も一日中工藤に勝負をしかけたがどれも効かず…。風呂から出て水を飲みながら俺の魅力って一体…と考えていると、横から視線を感じてそちらを見る。工藤とばっちり眼が合ったが、すぐに逸らされてしまった。耳が赤いのは…まさか…。
 工藤、と呼ぶと ふふふ服着ろよ! と赤い顔で怒鳴られた。風呂上りの為上を着ていなかったのが気になるらしい。初心なやつめ。
 その後、トランプ銃の調整をしていると同じような事が起こった。ドライバー片手に考える。
 どうやら自然にしている方が工藤にはクるらしい。それって俺にベタ惚れなのでは??やべー、まじで押し倒したくなってきた。

 今日も隣で眠る俺(俺は既に工藤邸の居候と化している)の悶々としたオーラを感じ取ったのか、工藤はさっさと熟睡してしまった。





kiss  2005-12-28 (日)



 起きて、工藤の寝顔を見ていると思い出した。
 あれからあっちの家に帰ってないので、コンビニの袋が床に置きっぱなしだ。元々キッドの隠れ家的に使っていたので、これから暫くは使わない家だ。ちょうどいいから一度戻って部屋の整理をしてこよう。そう思って早朝工藤邸を出た。

 すぐに戻ってくるつもりだったのだが、工藤の置いていった荷物も一緒に整理していると思いのほか時間がかかってしまった。工藤邸に着いた俺を迎えたのは、俺の帰りを待っていた工藤だった。

 もう戻ってこないかと思った…

 って工藤は今にも泣きそうな顔で…俺ってそんなに信用がないのだろうか。
 もどかしさに、工藤の手を取って抱き締めたけど、それがとても細くて怖くなった。
 さらにぎゅっと抱くと、怪訝な顔をした工藤が俺を下から覗きこむ。無防備極まりないその仕草に一瞬俺の理性が飛んだ。

 次に見たのは口に手を当てて真っ赤になっている工藤。
 顔近づけるからだよ。
 意味深に笑って言うと、工藤はからかうなよ!と憤慨してしまった。そんな訳ないだろ、誰が冗談で男にそんなこと…って工藤に説明するのはまだ早いか。少しは俺とこの家に二人きりでいることを意識してもらわないと。

 ごはん作るけどなにがいい?

 そう聞くと工藤はどこか安心したような、脱力したような様子でカロリーの少ないものを欲しがった。却下だ。もっと肉をつけてもらわないと落ち着いて抱き締められない。





前と同じだ  2005-12-29 (月)



 このだだっ広い家を、俺が一人で………掃除するのか。

 工藤の家事嫌いは俺の家にいたからではなかった。年の瀬も迫るこの時期に、小説ばかり読んでいるのがその証拠だ。掃除しないの?と聞いて 年が明けたらする と言われた瞬間に俺がこの家で果す役割を理解した。よく考えるとこっちに来てからというもの飯を作るのは全て俺で、質の良いキッチン用品はあれど最近使った様子はなかった。いつの間にやら工藤邸のお風呂の洗剤、柔軟剤、救急箱、トイレットペーパーの位置を覚えた。
 それでも、黒羽がいてくれると飯が上手くて嬉しい。なんて語尾にハートをつけて言われると、家事は全部俺に任せろ!と口走ってしまう馬鹿な俺。
 そろそろ俺の気持ちに気づいてもいいころだと思うのだが…
 そこのところどうでしょう?工藤サン。





無題  2005-12-30 (火)



 今日は朝から工藤邸を掃除した。流石に広いので隅から隅までというわけにはいかなかったが、工藤に手伝わせたかいあって、午前中に大体の部屋が片付いて俺は爽快感でいっぱいだった。俺は工藤の相手にうってつけなのかもしれない。
 雑巾を持たせるのが躊躇われたので工藤にはモップを渡した。手が冷えると思ったのと、下手なことされたら困ると思ったのと両方の理由からだ。モップを持った工藤はすいすいと床を歩いてせっせと埃をとっていた。その姿がなんだか可愛くてこっそり携帯で写真を撮る。気づいた工藤が嫌がっていたが、昼飯にあいつの好物を出すと上機嫌でそれを食う。

 やはり食っている時が一番可愛いなー

 今日は一日中顔がにやけっぱなしだった。




続きは普通のSS方式です↓





 12月31日。
 今日で今年も終わりだ。早かったような、遅かったような…。一つ言えるのは後半の二ヶ月は特別に濃い時間を過ごしたという事。
 工藤が脱走してからというもの、俺はずっと工藤邸に寝泊りしている。少しずつ着替えや生活用品を持ち込んで、新学期からはここから通う準備もできている。
 思えば、会ったばかりの頃は、今目の前でみかんの皮を剥いている工藤の事をライバル視していた。舐められてなるものかと張っていた俺のバリアを、ぼけた工藤は簡単に一掃してしまった。イメージとの違いに最初は面食らったが、すぐにペット感覚になって癒しを求め、今ではその口唇に、見え隠れする鎖骨に、細い腰に欲情している。俺はこんなに即物的な生き物だったのか。

「なに?黒羽も食いたいのか?」

 じっと見ていた俺に工藤は首を傾げて問う。続けて簡単に筋を取ったみかんを半分に割って片方を俺に寄こした。工藤のむいてくれたみかん…。

「ありがとう」

 頬を掠める様に唇をつけ、工藤の肩を抱く。工藤はみかんを食いながらテレビを見てなんの反応も示さない。ここ数日のスキンシップで慣れてしまったのか。首にさらさらな髪がかかって気持ちいい。工藤に触れているところが温かい。年明けにむけて騒いでいるテレビ番組をつまらなそうに見ている瞳は、やはり青みがかっていて…綺麗だ。

「そろそろ付き合っちゃうか………」
 うん、新年もくることだし。新しい年は気持ちよく迎えたいよな。
「は…?今なんか言った?」
「工藤、俺たちさ、いい加減付き合わない?」
「どこに?」
「わあ古典的。そうくるか…」
「何だよ!?また俺のことからかってんのか?」
「違うって。えー、わかりやすく言うと……僕たち恋人になりませんか?ってこと」
「……こいびと……」

 工藤は目を見開いてたどたどしく呟いた。いまいち状況を理解していない工藤の顔を覗きこんでさらに言う。

「二人でデートしたり、ちゅーしたりすんの」
「それはもうしただろ…」
「そういやそうだね…でもさ、それを頻繁にするのって友だちじゃないだろ?」
「……そうだな」
「俺は工藤が好きだから、キスしたいし友だちじゃなくて恋人になりたい」
「でも、俺が前に言った時お前は何も言わなかったじゃないかっ!」
「え…ま、前?」

 大人しく俺の言葉を呑み込もうとしていた工藤が、急に俺を睨む。だけどその瞳は潤んでいて、俺を断罪するようにも見えた。工藤はそのまま眼を伏せて俺の胸に頭を預け震えた声で言う。

「俺はお前に好きだって言った!」
「え?え?いつ?」
「風邪ひいてお前が看病してくれた時だよ…」
「あ」

 11月中旬ぐらいだったか…鍵を持っていなかった工藤を長時間外で待たせる事になって、結果風邪をひかせてしまって、学校をさぼって看てやったことがあった。その時に、確かに工藤は言った。

「あれ、友だちとしてじゃなかったの…?」
「ダチに好きだなんて言うか!!」

 なんてことだ…!俺が工藤からのシグナルを受け取ったのはもっと後の事。その前から工藤は俺の事を…?しかも、俺はあの時随分おざなりな返事をしたような…

「今も…?まだ俺の事好き?」
「決まってんだろ…」
「俺も態度で示してたつもりなんだけど、気づいた?」
「最近なんかおかしいと思ったけど…からかってんだと思ってた」

 苦笑いで言う工藤はどこか儚げで。
 それは俺が工藤からの告白に返事をしなかったせい?
 手を工藤の背と頭に添えると、工藤もそろそろと腕を俺の背に回す。
 つくづく抱き心地がいい。こうして抱き合うのは初めてではないけれど、こんなに心臓がうるさいのは初めてだ。
 これからは恋人ってことでいいんだよな?
 そう思って小さく工藤と口にした。工藤も吐息のような声で俺の名を呼んで誘われるまま口づけた。軽く触れ合わせたまま、しっとりと柔らかい口唇の感触を味わって、放すと同時に工藤が悩ましげに息を吐く。

「…はぁ……年越しちまったじゃねーか…ばか」
「本当だ…」

 工藤に言われて見ると、ずっと点けっ放しになっていたテレビ番組でタレントたちが新年の挨拶をしている。
 年越しちゅうなんて年明け早々幸先いいな。言いながらにへらと笑うと、工藤が半分タックルするように俺の胸に抱きついてきた。鼻先を擦り付けて、それはまるで甘えモードの猫。
 ああ、久し振りだなこの感触。そしていい匂い。
 今までの工藤の言動を思い出し、実は工藤も同じ事を考えているのかもなと思うと自然と顔が綻んだ。
 今日から俺と工藤の新しい生活が始まる。




end










ひとまず終わりました。2ヶ月に渡った長い企画でした。お付き合いくださった皆々様に感謝申し上げます。
最後尻切れになってしまったので、シリーズ形式で続きかけたらなと思ってます。その時はまたお付き合い下さいませ。
2006.1.3 nina