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11/1-15 11/16-30 12/1-15 12/16-31 end 今日もハズレ 2005-11-1 (金) 今日は米花シティホテルでビッグジュエルの展覧会があった。 当然キッドとして現場に向かう。いつものように中森警部と白馬のヤローをあしらって盗みは成功。目当ての宝石ではなかったが、パンドラの候補が一つ減ったのだから良しとしよう。 そういえば、あの2人はいつも通りちょろかったが、今回はある人物のおかげで少し…本当に少しだが、逃げる時に手こずった。やはりあのジョーカーは厄介だ。 工藤新一。 俺と同年の帝丹高校2年生。親は世界的推理小説家にして幾多の事件を解決している切れ者。と並外れた美貌と演技力を誇る元女優。二人は現在アメリカ在住。子供を残して海外ぐらしなんて、やはり普通の神経は持ち合わせていないのだろう…。そして肝心の工藤新一はと言うと、マスコミの取材には一切応じず、画面に映る時も無表情を通す、なんて言うか、すかしたヤロウだ。キッドの現場に来た時も性質の悪いトラップをしかけてきたり、銃をぶっ放したりとかなりの危険人物と言える。 面と向かって対峙したことはないけれど(それは御免こうむりたい)、白馬が言うには「大変美しい」らしい。本当にキモいやつだ…。とにかく工藤新一はなるべくなら会いたくない人物だ。充分警戒する必要がある。 不可解だ 2005-11-3 (日) この世は謎に満ちている…。今日ほどそう思った日はない。 今日、工藤新一を拾った。 何故だろう…何故、キッドの隠れ家にしているマンションの前に、工藤新一が落ちて…、否、倒れていたのだろう…?しかも奴は外傷もなく、気持ち良さそうに寝ているのだ。置いておく訳にもいかないのと、ちょっとばかり好奇心が湧いたので、家に入れて寝かせてやった。 俺が寝ずに見てやっているのに奴はいっこうに起きる気配がない。これが爆睡というやつか。 今日はもう疲れたのでこれで終わりだ。 あいつが起きた 2005-11-4 (月) 探偵を拾ってから20時間後の午後10時。奴は目覚めた。と同時に「お前誰だ」と睨んできやがった。どう名乗ろうかと逡巡していると(この時は素顔だったのだ)探偵が俺の後ろを見て絶句した。何を見たのか察した俺は血の気が引く想いだった。何でこんな失態を演じてしまったのだろう…今考えても理解できない。俺がこんな初歩的なミスを犯すなんて! 俺は…部屋の隅に干してあったキッドの衣装によって、簡単に工藤に正体をバラしてしまったのだ。 勿論、誤魔化そうと思えばいくらでも手はある。だがそれは普通の人間に有効なのであって、このクソ有能な探偵相手では咄嗟の嘘は失態を重ねるだけだ。そう判断した俺は潔く怪盗であることを認めた。 対する探偵の反応は極薄だった。確か「へぇ」とか「あそ」程度だったと思う。その後すぐにあいつは「腹が減った」と言いやがったので、俺の正体がバレたショックは瞬時に探偵に対する憤りに取って変わる。 遅い夕飯を食べた探偵はいつの間にか寝ていた。 こいつはまだここに居座る気らしい。ていうか寝すぎじゃないか…? 明日は学校なので詳しく事情を聞くのは明日の朝にしよう。 またこの隠れ家に泊まるのか…いい加減実家に帰りたい。 なんでこんなことに… 2005-11-5 (火) 朝起きるとあいつの姿はなかった。やっと帰ったのかと思った直後、キッチンに出しっぱなしになっている牛乳とパンを見て盛大に溜息を吐いた。あいつは絶対にO型だ。 置手紙くらい書いていきやがれ、と悪態を吐いて学校へ向かう俺。 帰ってきたのは隠れ家の方だ。唯、少し片付けてから家のほうに戻ろうと思ったからこっちに来たんだ。だから、決して、我が家のように帰って来た探偵を迎える為ではないのだ。 しかも探偵はご丁寧に荷物持参で、笑顔でこうのたまった。 これから世話になるなv ……… なんだそれは? 何故俺がお前の世話をやかなきゃならんのだ。 ずかずか侵入する探偵。勝手に自部屋を決める探偵。 俺はキレた。すぐに出て行けと言うとあいつはびくりと身体を震わせて上目遣いで見上げてきた。俺より背が低いらしい。眼が潤んで今にも雫が落ちそうだった。なんで俺が悪者みたいになってんだ? あいつは狡い。あんな犬と猫の可愛いところを取ったような顔をするな!(実は俺は動物好きなんだ) 結局、探偵を暫くこの家に置いてやる事になった。あいつが家に帰れない理由はストーカーが自宅周辺をウロついているかららしい。人気者は大変なこったな。 あいつ一人で此処に置く訳にもいかないので、俺も暫くここで図々しい探偵と同居だ。先が思いやられる…。 俺は主婦か!! 2005-11-6 (水) 同居2日目。2日目にして俺は悟った。あいつは一切の家事をする気がないらしい。 今日は夕方に殺人事件があったのであいつの帰りが遅かった。探偵として事件を解決するのはいい事だと思う。高校生の身で深夜まで警察に協力するその姿はキッドの仕事に追われる自分とダブって他人事とは思えない。帰ってくるなり奴が「魚が食いたい」とさえ言わなければ、俺ももっと労ってやったのに… その一言で俺は弱味を握られ、あいつは悪魔のような微笑みで良からぬ考えを廻らすのだ。 腹が膨れたら風呂、読書、就寝。はっ、いいご身分だな。炊事、洗濯、掃除は全て俺。 気付けば朝食の準備も俺。 俺は主婦じゃないぞ! 敵は手強い 2005-11-7 (木) 俺のくつろぎルームはすっかり工藤新一の部屋と化した。 此処は元々俺のお気に入りの隠れ家だったんだ。けっこうな値段のするこのマンション。キャリアウーマンの振りをして借りているので、部屋数は多く広い。風呂、トイレ、キッチンに至るまで全て最新式の豪華仕様。その一部屋が今じゃ他人のモノと成り果てた。 部屋を覗けば、綺麗にシーツがひかれた(俺がしたんだ)ベッドの傍らで横になり小説を読み耽る探偵。ドアを開けてジト目で見る俺に気付いた奴は、起き上がって首を傾げた。つられて俺まで首を傾げそうになった。その仕草はやめてくれ。 口を開いた探偵は今更ながらに俺の名前を聞いた。そういえば言ってなかったっけ…。本名を告げると、あいつは何故か嬉しそうに「黒羽」と呼んできた。だから俺も呼ぶときは「工藤」と呼ぶことにする。 よくわからないが…工藤に手懐けられている気がする。気のせいだと思いたい。 キッド vs 工藤のあほ 2005-11-8 (金) 今日は工藤が家に転がり込んでから初のキッドの仕事だ。 正体は既に知られているので、開き直って遅くなる旨を伝える。予想はしていたが、工藤も参加するのだと言う。 妙な感じだ。怪盗と探偵が同じ家から其々の学校に行って、その帰りに博物館で対峙し、何もなければ同じ家へと戻る。まず有り得ないだろ。工藤のストーカーが悪いのか、はたまた本人の常識が足りないのか、俺が甘いのか…現に今はこんな状況に陥っているのだ。 だが、出かける前「現場で待ってろよ」と言った工藤の好奇心の塊のような表情に、この生活が始まって以来、俺は初めて こんな生活もいいかも… と思ってしまった。 結果はまぁまぁだ。盗んだ後パンドラでないことがわかり、単独行動をしていた工藤にそれを返して、ダミーをばら撒きつつ家に帰った。盗みを防げずに悔しそうな工藤が見れたので俺の気分はいい。反対に工藤は不機嫌で、帰ってくるなり着替えずに寝てしまった。 今日は俺の勝ち。 休日 2005-11-9 (土) 日頃の働きの反動か、工藤は休みだというのに外に出ようともせず人の家でごろごろしている。買い物に行って来いと言ってもシカトだ。まぁ、お前に期待などしてはいないが。本当にヒモ以下な奴だな。 俺も特に予定はなかったのでずっとリビングでマジックの練習をしていた。俺がカードで基礎的な動作を繰り返す横で、工藤は無言で学校の宿題を終わらせ、推理小説を読み始めた。しかしそればっかだな、あんた。そして昼時になると徐に本を閉じ、テレビをつけて高校サッカーを見だす。 俺はそんな工藤を横目に昼ごはんの準備。 新婚を過ぎた夫婦の土曜ってこんな感じなのかもな。 たまには外出 2005-11-10 (日) 野郎二人で家に篭るってのも不気味だよ。って事で今日は工藤を連れ出して外に出た。出る前にぐだぐだと文句を言うのは例の我侭坊っちゃん。事件がないと出不精なのか。なんてやつ。 外に出た工藤は、最初こそ“嫌々ついてきただけ”という雰囲気を出していたが、ちょっとしたショッピング街に入ると興味深げに服やら装飾品を覗き込んだ。そういえばこいつパッと見服なんて気にしてないように見えるが、よく見るとなかなかいいものを着ている。欲しいなら買えば?と言う俺に工藤は不思議そうな視線を寄こした。何だよ?俺変な事言ってないだろ…? 答えを聞いて俺は激しく脱力した。あいつは「服なんて自分で買うもんじゃないだろ?」と言うとさっさと先を歩き出す。じゃあ一体が誰が買うんだ!そう思った俺の頭の中でにっこり微笑んだ元女優が手を振っていた。ああ、そうか…そう育ってきたのか。しかし、それが一般常識だと言わんばかりの物言いに、俺は工藤の将来に一抹の不安を覚えるのだった。 かくして、食材を買う時に工藤に自炊の心得を叩き込んで外出は終了と相成った。 日に日に工藤のイメージが崩れつつある。今ではあのクールな姿は俺の見間違いだったのかと思ってしまう。まぁ、目立って迷惑をかけられている訳ではないのでもう暫く置いてやることにする。 軽すぎ… 2005-11-11 (月) 今日も朝食は俺が作って、それを食い終わった工藤が先に家を出る。勝手に朝シャンをして髪が半乾きのまま出てゆくから凄い。顔に似合わずガサツな奴だ。 俺は今日の朝食、ハムエッグにサラダ、オニオンスープとパンを頬張って工藤に遅れて学校へと向かう。ドアを開けた瞬間、冷たい風が頬をうった。そういえば最近めっきり寒くなってきた。 学校が終わって帰り際、青子に捕まって委員会の仕事に付き合わされた。トロいあいつは作業がなかなか進まない。結果、膨大な量をほとんど俺一人でやる破目になる。終わった頃には外は暗く、風は今朝と同じくらい冷たくなった。家と別方向に帰る俺を青子は怪しげに見たが、適当にいい訳をしてマンションの帰路へ。 マンションの階段には工藤が立っていた。あっと思った瞬間、俺を見た工藤の体が傾いた。駆け寄って受け止めると顔が赤く熱い。完全な風邪だった。工藤はそのまま全体重を俺に預けてしまう。しょうがないから、肩を引き寄せ、膝に手をかけた。 軽い……エントランスの天井めがけて放り投げてしまいそうなくらい軽かった。 さぼり 2005-11-12 (火) 今日は昨日風邪でぶっ倒れた工藤の看病の為さぼり。 俺も出席日数がやばいのだが、風邪の原因は俺にもあるからこれくらいはしてやる。 今日になって目を覚ましたあいつに俺はまず合鍵を渡した。それから携帯の番号とメールアドレスを勝手に入れた。いつも俺の帰りの方が早かったから気にしてなかったが、必要な事だった。 辛そうな顔でそれを受け取る工藤に、ツキと体の一部が痛んだ。 消化のいいもの、風邪の時食べるものの定番な粥を作って工藤に渡す。 食べながらあいつは、 俺お前好きだよ… と呟いた。何がなんだかよくわからなくて、俺は どうも と言うのが精一杯で。一杯を食べきった工藤に「ありがとう」と言われ、照れる。 何なんだ、俺は何だ?こいつの奥さんか!否、違う! その後、工藤は薬を飲んで、早めに就寝した。 傍若無人で、マイペースで感覚が外れてる。あんな奴だけど、肝心なところはしっかりしてる(ありがとうが思いの外嬉しかったようだ)から憎めないんだろうな、となんとなく思った。 変だ 2005-11-14 (木) 風邪が治った工藤はいつものように何もせずに家にいる。 あまりにぐうたらしているので夕食の準備を無理やり手伝わせてみた。 俺が間違っていた。包丁を持って1分経たないうちに工藤が指を切った。家事に不向きなDNAなのかもしれない。 手首につたうほど血が出て、床に落ちそうだったからそれを指ですくってやった。それに工藤がぱっと手を引っ込めて赤い顔で俺を見る。確かに指で手をなぞる形になったが、舐めたんじゃねんだからその反応はないだろう…。昨日、また髪を乾かさずに出ようとするのを止めて、ドライヤーで髪を乾かしてやった後もこんな顔をした。恨めしそうに、何か言いたそうに下から俺を睨み上げる。はっきり言って全然怖くない。 ここはいいからテレビ見てて と言うと、工藤はおとなしくソファに座ってテレビを見ていた。後姿はやっぱり細い。腰なんて持ったら折れそうに…ってのはどうでもよくて。年頃の男子並みにするべく、あいつの分の食事を少しづつ増やしていこう。 今日は事件 2005-11-15 (金) 夕方5時ごろ、東都の方で殺人事件があったらしい。初めてのメールがそれなのが何とも工藤らしいというか…。携帯情報を教えたはいいが、工藤はなかなか利用しなかった。そしてこれだ。最初はもっと穏やかなメールにして欲しかった。 10時。まだ工藤は帰宅しない。夕飯は温めれば食べられるようにしておいた。昨日誓ったからにはあいつに偏食はさせない。どうせ現場で何も口にしていないのだ。家で一人前食わせてやる。 遅いと思いながらテレビを見ていると、番組の合間にその事件のことが報道された。解決したらしい。が、工藤の姿は映らず。終わったなら早く帰って来い。 こういうのを父親の心境と言うのだろうか…あいつは顔だけはいいからな。 報道が終わってから暫くして、こちらから電話をかけた。相手が呑気に「今歩いて帰ってる途中」なんて言うから、「こんな時間に外出歩くな!」とどこぞの親父のような小言を言ってしまった。何でタクシーを使わせないんだ、警察は。 そんなこんなで、俺は防寒着をまとって外に出たのだった。 |