焔の瞳 アスハ邸で休む事数十分。豪勢なテーブルの上のカップに波面が出来たと同時にルナマリアが呟いた。 「来たわよ、シン…」 普段どおりを装っていても、ルナの緊張が痛いほど伝わってくる。死別したと思っていた妹のメイリンがあの船に乗ってやって来るのだ。 「勢力を揃えてお出ましってわけか…」 分厚い強化ガラスを隔てた向こうには、ストライクフリーダムとインフィニットジャスティスに先導されたアークエンジェルとエターナルがアスハ邸の側の海岸に着岸するところだった。金銀の関節具が陽を受けて眩しく光る。その二艦と二機も無傷ではないが、こっちの被害との差は明白だった。 自由と正義、天使と永遠か。奴らにぴったり過ぎて笑える。自由と正義を盾に天使が邪物を冥界へと誘い、それらは如何なる戦場でも永遠に有り続ける。 「シン…」 隣を見ればルナが不安そうにこちらを見つめていた。きっと心細いのだろう。メイリンとどう向かい合うべきかと。 「いつもみたいにしてればいいんじゃない?喧嘩したわけじゃないんだからさ…メイリンとは」 「うん……シンは、どうするの?アスランと話すの?」 「わかんないけど、あっちが何か言ってきたら、ね…」 俺たちが話す側で他のクルーもざわつき始めた。マイペースなヨウランとヴィーノは二機を見てメカニックらしい世間話をしている。 二機のコックピットが開いた。ワイヤを足にかけて中から出て来たのは青いパイロットスーツと赤いパイロットスーツの男。メットで顔はよく見えない。地に足をつけた二人はメットを取りながら会話を始める。タイミング悪く木で遮られる死角に入った為顔までは見えなかったが、フリーダムのパイロットは明るいブラウンの髪をしていた。 程無くして、二艦から数十名のクルーが降りてきた。先頭に立って歩くのは意外なことに若い女性だった。年にするとグラディス艦長と同じくらいだろうか。その列の最後尾、ラクス・クラインと共にメイリンの姿があった。 「あ……メイリン!」 感極まったルナがガラスに手をついて瞳を潤ませる。震える指に自分の手を重ねた。 生きていて良かった、殺していなくて良かった、と心の中で繰り返しながら。 N E X T |