年下の小悪魔
050430







今日も事件は一件落着した。例によって彼のおかげである。

「高木さん、お疲れ様です」
にこやかに笑って挨拶をする姿は舞い降りた天使のように愛らしい。
「お疲れ様。車で送るからちょっと待っててくれるかい?」
「いいですよ、歩いて…」
「駄目だよ。危ないだろう?」
高木は歩いて帰ることなど断じて許さないと有無を言わさず車を回して新一を中に乗せた。
「事情聴取、行かなくてよかったんですか?」
「いいのいいの、目暮警部には言ってあるから」
「高木さんてお人好しですよね」
運転をしながら彼の横顔を盗み見ると楽しそうにくすくすと微笑っている。可愛い…と魅入りそうになるのを抑え、目線を前に戻した。
「そうかい?事件に協力してくれている君へのお礼のようなものだよ」
「お礼だなんて、僕が事件に首を突っ込むのは自己満足の為です」
「ははは、その自己満足のおかげで事件が解決しているんだから立派な社会貢献だよ」
「そうですか?」
「そうだよ」
新一は照れくさそうに窓の外を見てしまった。こういう普段の仕草は年相応か少し幼くも見えて微笑ましいが、いざ事件現場に出ると人が変わったように慧眼をもって圧倒的な迫力で犯人を追い詰める。そんな彼に憧れると同時に自分の思いのままに支配したいという危ない思考が湧いて出る。
泣いて縋る様を見たいような、善がって狂う様を楽しみたいような…って僕相当やばい奴だよなぁ
彼にお人好しと思われているならなおのこと、こんな自分は封印しておかねばならない。善人そうな刑事が実は年下の探偵くんの身体が欲しくて堪らない危険人物だとは決して気付かれてはならないのだ。
そうこう考えている間に車は工藤邸に到着した。
「高木さん、送ってもらったついでにお願いがあるんですが…」
いつもなら律儀に礼を言って家に入ってしまう新一が今日は何故か高木を引き止めた。高木はお願いという言葉にドキドキしながら次の言葉を待つ。
新一は高木に逃げられないようにとスーツの裾を掴んで言葉を選びながら口にした。
「あの、今日僕の誕生日なんです」
「えっ?そうだったのかい?そんな日に呼び出しちゃって悪かったね…」
「いいえ、いいんです。それで、お願いがあるんですが聞いてくれますか…?」
暗い車内の中、聞いてくれなかったら泣いちゃう…と言わんばかりの眼で見つめる新一に高木はなんとか理性を保ちながら
「いいよ、僕にできることなら…」
と軽い気持ちで返事をした。
「本当に…………?」
最終確認として新一が聞いた。
「うん」
「よかった…」
そう言って新一が一度眼を閉じ、再び開かれたその双眸には剣呑な光が浮かんでいた。まるで現場で犯人を捕らえる時のようなそれに高木の背中に冷や汗が流れる。
「工藤くん……?」
「高木さん、僕のお願い聞いてくれるんですよね?」
「あ、ああ」
「じゃあちょっと眼を閉じて下さい」
何をされるんだと恐怖心が湧くが今の新一に逆らえる気もせず、高木はおとなしく眼を閉じた。
「いいって言うまで空けないで下さいね?」
「え?」
思いの外耳の近くで聞こえた声に驚き声を発しそうになったが、次の瞬間柔らかな感触が口を包みそれは叶わなかった。固まる高木を他所に新一は口唇を合わせたまま角度を変えて重ねる。一度口唇を離したと思えばそれは息継ぎの為で、さらに高木の首に腕を絡めて今度は口を割り中に舌を挿し込んだ。
「ン…ぅっ………ふっ…」
自分から仕掛けておきながら新一は甘い声を発して身体を震わせた。そんな新一の媚態に固まっていた高木も身体に熱を帯び始める。
力なく垂れ下がっていた腕を新一の背に回して自らも舌を絡めようとした時、突然新一が高木から身体を離した。
「高木さん、俺からのお願いはこれだけだよ」
「工藤くん」
助手席から身を乗り出した新一の身体を引き寄せてもう一度口唇を重ねようとしても、上手くかわされてしまう。ここまで煽ったのは新一のほうなのにと自然と非難するように見る。それに対して新一は高木の首に腕を回したまま至近距離で含み笑いをした。
「だからここからはお誘い。ちょっと家寄って行きませんか?」
「それってどういう…」
お茶でもどう?と言うのと同じ様に軽い調子で言う新一の真意を測りかねる。
「わかってるんでしょ?もっと深く絡み合いませんか?ってことですよ…」
「でも…僕は……」
直接的な言葉に顔を赤らめて高木は狼狽える。願ってもないお誘いだがまだ高木には一縷の良心というものが残っており、心の内では激しい葛藤を繰り広げていた。
だが新一はそんな高木の葛藤を嘲笑うかのように妖艶な台詞でたたみ掛ける。
「俺の身体が欲しくない?」
キスの時とは違い、あくまでも選択権はあなたにあるのだと高木の言葉を待つ。真面目な高木は逡巡して眼を泳がせる。焦れた新一はとどめをさすべく告げた。
「あなたがやれと言えば何でもしますよ?」


高木の理性が切れたのはこの3秒後。







.end

















高新なんだか新高なんだか…