いじめ




「新一〜、オレなんかしたー?」
朝からずっと顔も見てくれないし、どれだけ話しかけても言葉を発してもくれない。そしてただ今、正午です。
・・・そう、もう半日もたったんだよ!?

「しんいち〜〜〜」
もう泣きそう・・・・・泣くのなんて何年振りだろ?多分、小学校低学年以来だ。最後に泣いたのはどうしてだったか・・・・・


ああ、そうか・・・父さんが死んだ時が最後なんだ――――――

そう思ったら本当に涙がこみ上げてきた。。新一に気付かれる前になんとかしなきゃ。
だけどオレの意思を無視して次から次へと零れる涙はいっこうに絶えない。
どうしちゃったんだ?オレ。止まんねーよ・・・・・



「快斗・・・?」

とうとう新一に気付かれた。もう隠しようがないくらいぽたぽたと涙が頬を伝っていた。

「快斗!ごめん!俺が悪かったから」
「・・・・・」
ほんのちょっと焦らせてやろうとしただけなのに、まさか泣かせてしまうとは思わなかった。こういうときってどうすればいいんだ?
暫く考えて思い当たったことを実行することにした。

「かいと・・・」
頬に手を添えて口付けると快斗の涙が止まった。

これでよかったんだよな・・・?

「初めてだ・・・新一からしてくれたの」
「そうだったか?それでもう平気か?」
変なところに感動している快斗から涙はもう消えていた。
「うん!」
満面の笑みで言う快斗、これがいつもの快斗だ。少々ゲンキンすぎる気もするが、あのまま泣かれたままではたまらないのでこれでよしとしよう。

「そういえば、新一はなんで口きいてくれなかったの?」
「もう忘れたよ・・・」
「えー、教えてよー」

お前の泣き顔と笑顔見たらさっきまでの俺の怒りなんてどうでもよくなった。・・・なんて素直に言う俺じゃない。

「ほんとに忘れたんだよ」
「そんな忘れるようなことでオレ半日もシカトされてたの!?」
「・・・悪かったよ」
「そんなんじゃ許せないなぁ、罰としてあと半日は携帯切ってオレに付き合ってもらうから!」
「はいはい」
それじゃ罰になんねー。と思ってもやっぱりお前には言ってやらない。

買い物に行くと張り切る快斗を横目に肌寒い外のことを考えて二階にコートを取りに行った。こんな瞬間に幸せを感じるなんて、お前はわかってないんだろうな。




Please don't cry darling の加筆前バージョン。後半部分が全然違います。













オーナー・シェフ





「ペペロンチーノ上がったぞー」
「はいはい、5番フォンダンショコラ二つでーす」

「デザートの盛り付けはお前がやれ」

「え?いいの?オレやっても」
「俺はデザート見るのが大嫌いなんだ。よって盛り付けも手抜きになる。お前は甘いの好きだし適役だから、お前がやれ。これからデザートは全部任せる」
「はいっ!シェフ!喜んでやらせていただきます!」
「そこのペペ運んだらやれよ」
「Oui!」



「どーよ?これ!」
「はぁ、やっぱお前に任せて正解だったな・・・・・」
お見事と感嘆する新一を見て快斗はホクホク顔になった。
「でも新一の作るデザートめちゃくちゃ美味いのに盛り付けはやる気ないなんてなー」
「作る時はマスクしてるからな」
「甘ーよ、これとか胃が痛いとか文句言いながら作ってるもんねー」
あははと笑っていると新一がまだオレの盛り付けたデザートをじっと見ていた。

「何か変なとこある?」
「いや?その逆。あの見栄えのパッとしなかったフォンダンがこんなになるなんてなーと思って。味に支障がない程度にされた装飾、そのバランス、見た瞬間に与える印象、どれを見ても申し分ない。うちは料理の味と同じくらいに形に拘ってるから、デザートはお前がいれば大丈夫だな」

「シェフ〜〜、ありがと〜!オレ頑張るよ!」


今はまだ店の見習いだけど、もっともっと新一のこと手伝えるようになってゆくゆくはシェフの片腕になるから待っててねv

そして、いつかオレの気持ちに気付いてね。





突発、突発。続き書きたい。
書いてあることすべて知ったかぶり。ぐはー。
スイーツって書くべきだったかもしれんが気取ってる風だし、第一新さん使わんだろうってことで却下。












口笛






「〜〜〜〜〜♪♪♪」
「あっ、それけっこう前に流行ったやつだ!懐かし〜」
口笛が聞こえるから新一の方を見ると寝転んで雑誌を捲りながら軽快に口でリズムを奏でていた。
「歌詞どんなんだっけ??忘れちゃったー」
「神様はなんにも禁止なんかしてない愛してる〜愛してる〜♪」
新一は快斗の言葉を聞き、リズムに乗ったままサビの部分だけ歌詞をつけて歌うとまた口笛に戻って続きから吹き始めた。
「〜〜〜♪」
快斗は雑誌を見続けている新一を暫し見つめ、先ほど二回も言われた台詞を噛み締めた。

「新一ーー!オレも愛してるよ〜〜!!超ラヴ!」
「うわっ!なんだよいきなり、重たいって!」
寝転んでいた新一の背中から抱きつくと頬をすりすりと摺り寄せて快斗が懐いた。自然に新一に快斗の体重がかかり苦しくなった新一は快斗を退けようとしたが悦に入って戻ってこないこの男は自力では退ける事はできない。

なんでこんなに悦んでんだ?俺なんかしたっけ??

無意識に快斗をメロメロにした工藤新一18歳であった。






思いつき話ですから・・・。上の歌は川本真琴さんのです。
これがこのコーナーのあるべき姿です。他のは少し長い感があるのです。









初夜翌朝


「新一、顔上げて」
「いやだ!」
なんて子供のように可愛らしく、頑なな態度だろう。

「新ちゃん、そんなにわがままばっかり言ってると悪戯しますよー?」
「絶対やだ!恥ずかしいんだよ!」
「いいじゃん、シャワー浴びてすっきりしようよvだから出てきてー」
「一人で行って来いよ」
「だーめ!何事も最初が肝心なの。今日そうしたら新一はこれからずっとそうするんでしょ?そんなのダメ!」
「どうしても・・・行かなきゃ駄目か?」
「うん、ダメ」
「でも・・・その、笑うなよ?」
「うん」
「・・・・・・動けないんだよ
「え?腰そんなに辛いの・・・?」
コクン
かなり無理させてしまったか・・・と反省するが、あの新一を前にして我慢しろと言う方が無理であろう。

「じゃあ快斗君がバスタブまで運んであげようvオレの責任でもあるしね」
「え、ちょ・・・・ぅわっ」
新一が包まっていたシーツをはがして手早くお姫様抱っこをする。
「気付かなくてごめんね?動けないならオレが全部洗ってあげるねv」
「いい!それは遠慮する!」
「遠慮無用だよ〜♪」

ふんふんと鼻歌を歌いながら軽快に階段を降りる快斗がもう1ラウンドしたいなぁなんて思っていることは新一には知る必要のないことであった。






なんの捻りもなく書いてみた。









オーナー・シェフ2




快斗がデザートの飾り付けをするようになってからというもの、デザートの注文回数が著しく増えていた。


「もうすぐ先月の3倍になるな」
パソコンに入力した売り上げデータを見て新一が呟くとちょうどいいタイミングで快斗が事務室に入ってきた。

「何が3倍なのー?」
「デザートのオーダーだよ」
椅子を回転させて後ろにいる快斗を上目遣いで見やる新一に心臓を鷲づかみされながらも冷静さを装って快斗が素直に喜んだ。
「ほんとに?手間かけてやってる甲斐があるね〜」
「お前のおかげだよ。やっぱりお前に任せたのは正解だった」
普段は負けず嫌いな新一だが、今はただ心から快斗に感謝していた。自分より快斗の方が食品を彩るセンスがいいと前から感じていて、それが正しかったことも何故だか嬉しかった。
それ故に新一は終止笑顔で快斗に話しかけていた。

ああ・・・・すげー幸せ。オレちゃんと新一の役に立てたんだ。こんなに嬉しそうにしてくれるなんて、オレもう告っちゃいそう・・・。


「せっかくだからさ、3倍越えたらなんか褒美やるよ。何がいいか考えとけ。休みでも給料アップでもなんでもいいぜ」
「マジ?!オレ頑張っちゃうよ〜♪でもさ、3倍もうすぐなんでしょ?だったら条件3.5倍にしようよ。その方が燃えるし」
休むなんてもったいないこと誰が願おうか。その間新一と離れることになるのだから。二人で休んでどっか行くのは有りだけれど、オーナーシェフの新一がそう簡単に休めはしない。

「無茶言うなよ。今月って後5日だぞ?」
「大丈夫だって!ぎりぎりくらいじゃなきゃつまんないじゃん!」
「お前がいいならいいけどな。後で文句言うなよな」
「わかってるって。新しいデザインできたからちょっと変えてもいい?紅茶シフォンと檸檬のミルフィーユ」
「ああ、好きにしていいよ」
よほど自信があるのか、快斗は鼻歌交じりに「じゃあお疲れさまでした〜」と帰路に着いた。


「1番のオムライス上がったぜー」
「はいよー。7番ミルフィーユ2、シフォン1、レモンティー3でーっす」
「おう」

快斗の自信通りにデザインを一新した二つのデザートの注文数が軒並みアップした。作り置きしたデザートが切れそうになっているのを見て新一は嬉しい誤算に表情を緩めた。

今日もよく出るよなー。こりゃ4倍も有り得るかな?もっと作っとくんだったな。

快斗が先ほど注文されたケーキを持って行った後、新一は次の注文の品を仕上げたが快斗がなかなか現れないので自分でホールに出て持って行くことにした。数十人しか入れないこの店はこじんまりとした佇まいで、通常はバイト1人(快斗)と新一で、混む日でもバイトが2人いるだけの少数精鋭で営業していた。快斗がバイトとして入ってからは新一がホールに出ることはなくなっていたが、快斗がいないのでは出るしかないのだ。


ホールに出た新一が目にしたのはさっきのケーキを注文した女性客と談笑している快斗の姿であった。その内の一人がさりげなく小さな白い紙切れを快斗の黒い長エプロンのポケットに入れるのを見てしまった。快斗はそれに気付きながらも平然と変わらぬ対応をしていた。

その光景を目の当たりにした新一は一瞬固まったが、その女性客たちと目が会うと軽く会釈をして微笑むとそこを通り過ぎ、注文された料理を奥のテーブルへと運ぼうとした。


「ちょっと、誰あの人?すごいかっこいいじゃん!新しいバイトで入ったのかなー?」
「あんた知らないの?ここの料理とかスイーツ全部あの人作ってんのよ。工藤さんって言うんだって。ほんと美形よねーv」
「えー?そうなの?黒羽くん」

「ちょっとごめんね。ごゆっくりどうぞ」
新一に運ばせるわけにはいかないのと、ホールで人目に晒されるのが嫌で慌てて新一の側に近づいた。

「ごめん!新一。オレが運ぶよ」
女性客に新一を見られて、しかも料理を運ばせてしまったことを後悔して新一から皿を受け取り、小声で謝る。

「いや、いいよ。今お客さん少ないし。忙しくなったら呼ぶからあの子達と話しててもいーぜ」
早口にそう告げると新一は快斗の返答を聞かずにさっさとキッチンへと消えてしまった。

やっべ〜、やっぱ怒ってるよな・・・・。仕事中に無駄口たたいてたんだもんなぁ。


ムカムカする。何でこんなに気分が悪いんだ?快斗が客と仕事中に話してたから?接客業である以上話をすることも必要だろう。そうやって常連を作っていけばいいんだろ?
あいつに気があるっぽい女がいたって別にいいではないか。自分が口を出す問題ではない。むしろ、あんな可愛い子に言い寄られて幸せだなってからかってやるのが普通ではないか。でも、それができない・・・・・・・。


「シェフ・・・・・すいませんでした。仕事を疎かにして」
「いいよ別に。デザート好評だったみたいでよかったな」
祝福してやれと思っても、棘のある言葉しか出てこない。換気扇の前で煙草を燻らせてそう言うと黙っている快斗に続けて嫌味としかとれない事を口にした。

「あの子可愛かったじゃん?この後連絡するんだろ?もうとっくに3.5倍越えてるしいつでも休み取っていいぜ」
そう言い捨てた新一を悲しげに見つめた快斗はエプロンのポケットに手を入れると中の紙を出した。
「こんなのいらないよ」
言いながらそれをゴミ箱に捨てる。

「あの人たちとはお客として接してきたし、それ以上の関係になることはないよ」
「好みじゃねぇの?」
「そうじゃなくて・・・・・今オレには・・」
快斗が話しているとチリン♪とベルがなった。お客さんが帰るから会計をして欲しいという合図だった。
「わかったよ。お前にその気はないってことだろ?お客さん待ってるから会計頼む」
煙草を消しいつもの表情に戻った新一だが、快斗のほうは最後まで告げられなかった言葉を飲み込み、すっきりしないままレジへと向かった。





「新一、目標達成したからご褒美くれるんだよね?」
「結局4倍いったしなー。何でも言っていいぜ。できる範囲で聞いてやる」
二人の間に流れていた微妙な空気も消え、いつも通りに新一に話しかけたら、こんなことを言ってくれて、思わず欲望のまま願いを言いそうになった。
ちゅうしたいなんて言えないしなぁ。でも今よりちょっと親密になりたいなー。・・・・・あっ、そうだ!


「今度の店休みの日に新一の家行きたいv」
「え?家?そんなんでいいのか?」
「うん!それでオムライス作って欲しいな」
そんなんどころかオレにとっては豪華フェリー世界一周旅行よりも値打ちがあるよ。新一が生活しているとこに入れるなんて・・・・・・嗚呼、マーベラス!
「いいけど、安上がりだなお前。じゃあ次の休みにお前の家に迎えに行くよ」
「やった〜。新一の家に行けるんだーv」
「たいしたとこじゃないから期待すんなよ?」

家に行けるし、車に乗せてもらえる♪誤解されてちょっと凹んだけど、こんな嬉しいことあってオレって幸せもの〜。



その後、快斗が新一の車と家に驚愕することになるのだが、それはまた別の話。




長くなっちゃった