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17. 夕焼け 「昨日の事件は手ごたえあったかな?工藤君」 「まぁな」 「そりゃあなーキッドの予告を蹴るくらいだし?相当手強い相手だったのでしょうね」 「拗ねるなよ、ガキ」 「ガキじゃねーもん!キッドだもの!」 大袈裟なリアクションに軽く笑って、前の男の後頭部に目をやった。髪は男の性格そのままに好き勝手に跳ねている。初めて会った時より伸びたなと思うのは、それだけ時間が経ったということだ。 ふわり、触ると意外に柔らかい。 「ちょっと、人の髪で遊ばないでよ工藤君」 「うるせー、黙ってこいでろ敗者」 高校生にありがちな整髪料臭さのない髪だった。引っ張ったり、7:3分けにしたりして遊んでいると、イテ、くすぐったい、といちいち文句を言った。 「俺だって殺人現場よりそっちに行きたかったんだぜ」 「うん」 わかってるなら、嫌味言うなよ。 心で独りごちる。 街がオレンジに染まる中、黒羽のこぐチャリの荷台に乗って話をする。そんな穏やかな空気が俺を少しだけ素直にさせていた。 普段ならキッドを優先させたいと思っていることを告げはしない。聡いこいつに自分の気持ちを知られるのではと臆病な心が邪魔をするからだ。 だけど、そんな魔法も長くは持たない。 「キッドを捕まえるのは俺だからな」 「あはは、捕まんないよ〜だ」 「捕まえる!ぜってー捕まえる!」 「その意気込み、白馬と中森警部に通じるものがあるなぁ」 「…俺はあんなにがっついてないっての」 「確かに、あの二人には余裕が足りないよな。だから工藤じゃないと張り合いないんだよね」 少し間を空けて、信号で止まった黒羽が振り返り言う。 「だからさ、来てよ」 吸い込まれそうな深い色をした黒羽の瞳に俺は暫く無言で。信号が変わり再び黒羽が前を向いてからやっと返事を返した。 「……次は必ず行く」 後ろにいて良かった。今の俺の顔の赤さはきっと、夕焼けでは誤魔化せない。 黒羽は気付いているのだろうか。口から出ては消えていく言葉の中にひそんでいる俺の本心に。 殺人者なんかよりもお前に会いたかった。 想いの全てを告げた時、俺たちの関係はどう変わるのだろうか。 「工藤ー、今日家寄ってってもいい?」 黒羽の声にはっとする。トリップしていた原因が黒羽なら戻す声も黒羽だ。 自分たちの関係性へのもやもやした気持ちを胸の奥へと仕舞いこみ、俺はまた黒羽と他愛もない会話を交わす。夕日に向かって走るこの自転車の上、二人でいられることを喜びながら。 fin (070303) |