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11. 王子 「はぁ…かっこよかったなぁv」 自宅のソファにて朝食を取りながら新聞を広げる高校生が一人。 一面には昨夜都心を騒がせた世紀の大怪盗のシルエットが掲載されている。それは逆光の上に酷くピントぼけしていた。にも関わらず一面に使われるのは、その怪盗の情報がとても稀少であるからだ。 新一はコーヒーを口に含みながら視線を一面の下におろした。そこにある自分の写真を見て眉をひそめる。 「……ライバルなんかじゃねーのに」 “名探偵の勝利”だなんて勝手に書きやがって…そう心で愚痴り、バサリと新聞を折りたたんだ。 現場には行く――会いたいから――が、例え接近したとしてもほとんど言葉など交わさず、唯キッドが興味を失くした宝石を受け取るだけである。新一にとって毎度宝石を取り返したと騒がれるのは不本意なのだ。 (本当は普通に話がしたい。コナンのときはもっと話しかけてくれたのにな…) 身体を取り戻してからのキッドは以前の様に新一を気にかける事は無くなった。それは身体が縮むという特異体験をした事への優しさ故であったのか、それ以外の理由があるのか。答えの解らぬ新一もキッドに近づくことができず、二人の関係は平行線を辿っている。素っ気ないキッドに新一は怯え、一方ではもう一人の顔には胸を踊らせている。 新聞を置いて、テーブルの上の雑誌を開く。 (売り出し中のマジシャン……黒羽快斗) 雑誌の間には一枚のチケット。それは米花ホテルで行われる黒羽快斗出演の貴重なチケットであった。ようやく手に入れたそれと雑誌の写真を見比べて新一はうっすらと頬を染めた。 (これがお前の正体なんだろう?こんな目立つことして大丈夫なのかよ…はっきりと顔が見れるのは嬉しいけどさ) 雑誌をひとしきり見ると、快斗のページを切り取り、新聞のキッドの記事も同様にして、同じファイルに詰め込んだ。 新一は怪盗キッドと黒羽快斗の、いわゆるファンなのだった。 (そう、ただのファンだよ。別にこ、恋してるとかそんな気持ち悪いモンじゃないぞっ) 顔はかっこいいと思うけどそれは一般的な感覚としてで、キッドは自分の信念の為に頑張ってるから応援したいからで…そうぶつぶつと自分に弁解をしながら、新一は学校へ行く為家を後にした。 fin (060408) |