09. 聖域







 何で泣いているかって?聞かれても困る。
 お前のこと考えている時間の半分は泣いているよ。
 お前は幻影。もうその幻すら見せてくれないのか?

「名探偵?何か気に障ることを言ったでしょうか?」
「………そうじゃ…ない…」

 キッドが焦っている。パンドラが見つかったと言われただけでこの有様な俺を見て。
 覚悟はしていたのに、涙腺が言う事を聞かない。
 俯いて黙っていると、キッドの近づいてくる気配がする。足音がなくてもわかる。その白く清廉なオーラが間近に迫っている事は。
 涙を拭って目線を上げると、困惑した様子の怪盗。
 薄く口を開いた怪盗を遮ったのは、耳障りなサイレンの音。

「……………」
「……………」

 怪盗は口を閉ざした。俺も無言で離れる白を見つめる。
 サイレンの音が近づいてくる。怪盗は遠ざかる。
 ほら、もうこの手はお前に届かない。




fin









(060324)
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