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06. 嫉み 「でさ、最近エリちゃんが頻繁にヒス起こすんだよ…」 「あそ」 「なんだよ新一小説読んでねーでちゃんと聞けよ」 「おまえは学習能力がないのか?」 毎回毎回彼女ができる度に愚痴を聞かせに来るこいつ。正直ウザいけど、本気で拒めないのは俺がこいつに惚れているから。女の話を聞くのは気が進まないが、俺は気持ちを自覚してからの数年間で常人の比ではないほどの忍耐力を培った。今ではこいつの結婚式のスピーチを買って出てもいいとさえ思っている。 そう思うのは俺を親友と呼ぶこいつへの裏切りになるのだろうか? 「俺の成績知って言ってるのかな?新一くん?」 「頭が良くても女に振り回されてるようじゃなあ」 「振り回されてないってば!ただ、なんで怒るのかわかんねーんだって…」 「そうやって悩んでるのを振り回されてるって言うんだ」 「だってさ、この前『工藤くんとわたしどっちが大事なの!?』って詰め寄られたんだぜ」 「………………………………… は ?」 「この前新一と映画観に行ったじゃん?あの時彼女が同じ映画観たいって言ってたんだよ。でも約束したの新一のほうが先だったからそっち優先したら怒ってそう言われた」 「行く前に言えよそういうことは……」 「だって映画楽しみにしてたからー…」 「俺に気遣うな。彼女に遣え。言えば俺は他のやつと観に行ったのによ」 「だって先に新一と約束…」 「そんなの彼女と行くって言や文句なんて言わねーよ。男と女比べて優先するほうなんて決まってんだろ?お前の彼女独占欲強そうだしよ。変に義理立てするからそんな変なこと言われんだ」 「…………でも、…」 「でもじゃねー」 「……最近新一と遊んでなかったから優先したんじゃん。そんな怒らなくても…」 「怒ってんじゃない、呆れてんだ」 「……でもちょっと怒ってんじゃん」 「……俺のせいで別れたなんて言われたくないんだよ。ああ、もういい!俺が一肌脱いでやる!」 怒っているのは事実だった。まるで俺のほうが大事だと言われているようで焦った。そしてそれに気付かない快斗に対して憤りを感じた。それを誤魔化す為に口走ったことだった。 好きなやつの彼女の為にこんなことしてやるなんて…俺の恋心はここまで頑丈になったのか…そう自嘲してしまいそうな作戦を後日実行することにしたのだった。 根底にある感情は大層醜いものなのに、それでも快斗との関係に亀裂が入るのを恐れる。 こんな汚い俺と一緒にいるとお前まで汚れるのかな? ああ、心配ないか。 俺の穢れがうつるほど、お前は傍に居ないもんな。 葦06へ (060310) |