03. 希望







 黒羽への気持ちに気付いた俺にまず最初にやってきたのは絶望だった。
 きっとこの気持ちは報われない。要領はいい方だと思ってたけど、こんな所で人生つまづいてしまった。男、よりによって世界的怪盗を好きになるなんて。
 そんな黒羽がクリスマス遊びに来ていいかなんて聞くから、意識的に聞かないようにしていた事をぽろっと言ってしまった。
「彼女??」
「…いるんじゃねぇの?」
「いないけど?」
「ふぅ…ん」
  なら来てもいいぜ。偉そうに言ってカップを持ってキッチンに逃げ込んだ。
 やべぇ、顔がニヤけてる…。彼女いないってだけで俺の事好きだって訳じゃないのに何期待してんだか。
  リビングでは黒羽が持ち込んだゲーム機の音がする。
  期待させんなよ…叶わないと思っていないと友達の振りなんて出来ねーんだから。
  黒羽と居る時間が長くなり、絶望と希望の比率が変わってゆく。最初は前者が大半だったが、最近では黒羽があんな事を言う御かげでうっかり逆転してしまいそうだ。
「はぁ…」
「何こんなとこ隠れてタメ息ついてんの?」
「くっ…おま、ゲームしてたんじゃ…」
「工藤が戻ってこねーからだろ!」
  こいつ…俺がいてもずっとゲームしてるくせに何を…。
「横にお前いないと落ち着かないだろー早くあっちあっち!」
  そう急かしながら腕を引いて、俺をリビングへと連行する。ソファに座らせるとまたテレビに向かい始めた。会話もないのに、いないといけないのか。
  俺は小説を読むことにした。
 目線をテレビに向けたまま普段と変わらぬ調子で黒羽が言う。
「クリスマス何しよっか?」
「とりあえずチキン食うだろ?」
「ぶっ!お前簡単すぎ!」
「うっせーなぁ…プレゼント交換でもするってのか?」
 恥ずかしい。クリスマスに一緒にいられる嬉しさが顔に表れそうで憎まれ口ばかり叩いてしまう。こんな俺じゃやっぱり黒羽に好きだなんて言えっこない。
「つーか工藤ちゃんの方はクリスマスに俺と一緒でいいの?」
「いいよ…暇だし」
「よかったよかった。じゃその日はお泊りさせてもらおうっと」
「寝るとき着るもんは自分で持って来いよ」
「はーい」
 黒羽が前を見ていてよかった。
 これじゃ駄目だ。こいつはどこかの女のもの。
 今一度、心を絶望色に染めなければ。




fin









報われない話ですいませ;(060110)
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