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18. 鳥 「新一、いい加減認めたらどうだ?」 「ふざけるな!俺はお前らとは違う!」 「はっ、そんな金色の瞳をしておいてか?」 解き放たれた新一の背には既に立派な羽が生えている。漆黒の。 瞳は、興奮するほど光を放つ。 「お前はもうどこから見ても天狗だよ」 目を凝らせば数十キロ先だってクリアに見えるだろう? 獣の気配を敏感に感じるだろう? 暗闇が心地いいだろう? 揶揄するように頬杖をついて新一を見ると、悔しそうに顔を歪ませてこちらと睨んでいる。 「くそっ!お前が俺をこんな体にしたのか!?」 「まさか。抑圧されていたものを解放しただけだ」 身体の変化を認めた新一が苛ただし気に問い詰める。 「前にも言っただろ?お前は俺と同じなんだって」 「そんなはずないだろ!?俺は今までずっと人間だった!」 「それはずっと天狗としての能力を封じていたからだ。お前の母親が望んだので俺が封印した」 「……母さんと、お前に、一体どんな繋がりがあるっていうんだ…」 「聞きたいのか?」 「…………」 新一は閉口した。自分で聞いて、後悔している顔だった。ただでさえ自分の身体の変化に衝撃を受けている。その上さらに事実を突きつけるのは、酷な気がした。その細い体で受け入れるには、負担が大きすぎる。 そっと、新一の肩を抱き寄せる。意外なことに抵抗はなかった。 「母さんは、俺の本当の母さんだったんだよな?」 「ああ、それは間違いない」 か細い声で、「よかった」と呟いた後、新一は俺の背に腕をすべらせた。肩が揺れているのは、すすり泣いているせいかもしれない。その抱擁は、子供が父に、あるいは、弟が兄にするそれとよく似ていた。 そして、俺の視界の先には艶やかな黒翼。 翼の大きさは権威の象徴。美しさは魅力のあらわれだ。 「……快斗」 名前を呼ばれてはっとする。新一が初めて名前を呼んだ。それだけで舞い上がっている自分が少し恥ずかしい。 拘束を緩めて新一と正面から向き合うが、新一は何も言わなかった。 揺れる双眸は月のようだった。 その中に細く伸びた黒い瞳孔を見て、月に切り込みを入れたらこんな感じかと一人思考に耽る。 新一は黙ったまま、だが俺の背をつかむ腕は離さなかった。 甘えたがっているのかもしれない新一の羽を撫でると、びくりと身体を震わせる。 それでも、俺は真黒な羽を撫で続ける。 漆黒に染まったその一枚一枚が、ただただ美しかった。 fin (070407) |