18. 鳥
(16腕,パロディの続き)




「新一、いい加減認めたらどうだ?」
「ふざけるな!俺はお前らとは違う!」
「はっ、そんな金色の瞳をしておいてか?」

 解き放たれた新一の背には既に立派な羽が生えている。漆黒の。
 瞳は、興奮するほど光を放つ。

「お前はもうどこから見ても天狗だよ」

 目を凝らせば数十キロ先だってクリアに見えるだろう?
 獣の気配を敏感に感じるだろう?
 暗闇が心地いいだろう?

 揶揄するように頬杖をついて新一を見ると、悔しそうに顔を歪ませてこちらと睨んでいる。

「くそっ!お前が俺をこんな体にしたのか!?」
「まさか。抑圧されていたものを解放しただけだ」

 身体の変化を認めた新一が苛ただし気に問い詰める。

「前にも言っただろ?お前は俺と同じなんだって」
「そんなはずないだろ!?俺は今までずっと人間だった!」
「それはずっと天狗としての能力を封じていたからだ。お前の母親が望んだので俺が封印した」
「……母さんと、お前に、一体どんな繋がりがあるっていうんだ…」
「聞きたいのか?」
「…………」

 新一は閉口した。自分で聞いて、後悔している顔だった。ただでさえ自分の身体の変化に衝撃を受けている。その上さらに事実を突きつけるのは、酷な気がした。その細い体で受け入れるには、負担が大きすぎる。
 そっと、新一の肩を抱き寄せる。意外なことに抵抗はなかった。

「母さんは、俺の本当の母さんだったんだよな?」
「ああ、それは間違いない」

 か細い声で、「よかった」と呟いた後、新一は俺の背に腕をすべらせた。肩が揺れているのは、すすり泣いているせいかもしれない。その抱擁は、子供が父に、あるいは、弟が兄にするそれとよく似ていた。
 そして、俺の視界の先には艶やかな黒翼。
 翼の大きさは権威の象徴。美しさは魅力のあらわれだ。

「……快斗」

 名前を呼ばれてはっとする。新一が初めて名前を呼んだ。それだけで舞い上がっている自分が少し恥ずかしい。
 拘束を緩めて新一と正面から向き合うが、新一は何も言わなかった。
 揺れる双眸は月のようだった。
 その中に細く伸びた黒い瞳孔を見て、月に切り込みを入れたらこんな感じかと一人思考に耽る。

 新一は黙ったまま、だが俺の背をつかむ腕は離さなかった。

 甘えたがっているのかもしれない新一の羽を撫でると、びくりと身体を震わせる。
 それでも、俺は真黒な羽を撫で続ける。
 漆黒に染まったその一枚一枚が、ただただ美しかった。





fin









(070407)
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