17. 日溜り





 静かな朝。
 部屋にはつけたばかりのヒーターの大きな音がしていた。

「どうしたの?新一」

 寒そうにセーターの袖に手をすっぽりと隠した新一が無言でこちらに近づいて来た。
 かと思えば、そのまま胡坐をかいて座っていた俺の腹に背中をぴったりとくっつけて身を納めた。

「あったけー……」

 極楽そうに呟く新一。何考えてるかわからないけどこっちは大変だ。
 あの新一が!自ら俺に恋人的接触を試みたのだ!

「誘ってるとか……?」
「んぁ?」

 あ、やばい。この角度の新一はやばい。
 振り向き、下から見上げる悩殺ポーズだ。
 俺はごくりと生唾を一つ呑み込んで、更なる接触をと、腕を伸ばして新一の細腰を抱き締める。新一は背中をすり寄せて後頭部を俺の首筋に埋めた。髪があたってくすぐったいなぁ。
 新一は目を瞑り、眠っているように浅い呼吸を繰り返す。薄く開いた口唇に誘われるように自分のソレを近づけるが、気配を感じ取った新一がパチリと眼を開けて片手で俺の口を塞いだ。

「なに?おあずけなの??」
「そうだ」

 ぴんと立てていた耳がへたりと垂れる気分だった。飼い主から餌を遠ざけられた犬はこんな気分に違いない。
 ニヤリと意地悪く笑いながらも俺に擦り寄って離れない新一。

「うう、幸せだけどつらい…あ、そうだ。寒いならホットミルク作るよ!」

 いい考えだとすぐさま立ち上がる。結果、新一の身体を離す事になるのだが、欲情しすぎないうちに一度離れたほうが身の為だ。

「あ……」

 手持ち無沙汰となった新一の手が宙に浮く。ちょっと待っててね、と冷蔵庫の方へと体を向けると同時に、背中に小さな衝撃が走る。

「俺があったまってるとこなんだから、動くな」

 今度は背中に新一がくっついた。

 冬の室内で俺の腹と背中に、二つの日溜まりができた。




fin









(070103)
BACK