|
16. 永遠 「新一…」 玄関のドアを開けた工藤の顔が見えたのは一瞬で、次の瞬間には形の良い後頭部と白い項が視界に入った。 入り浸っている友人――そして怪盗――を入れようとした途端抱き締められた形となっている工藤は、全身で驚きを表している。 工藤が吃驚しているのは、なにも俺の行動に対してだけではない。俺は今までこんな風にこの男を名前で呼んだことなど無いのだから。 「黒、羽…?」 戸惑いをそのままに、工藤は恐る恐る俺に声をかける。今日がキッドの予告日だと知って、何か異変があったと察したのだろう。工藤の様子では悪い方に考えているようだが、実際は違う。 俺は一から順を追って説明したいのだが、感情が溢れてそれができない。密着した工藤の体温が思ったより温かくて涙が出そうだった。 背中を滑る掌の感触に後押しされるように、不安を募らせている工藤の顔を覗きこむと、薄く開いたそこに口唇を重ねた。 「あ…………」 「新一……」 「どうしたん、だよっ………くろっ……」 壁に身体を押し付けて、工藤の唇を味わう。キスの合間にいつもより甘い声が漏れて、それが益々俺から平静を奪う。 暫くそうして、唇を解放すると、約束が違うとでも言いたげな表情で工藤に下から睨まれた。 「好きだ…ずっと前から好きだった」 俺はまだ冷静になれないでいる。耳に注ぎ込むように告げると、堰を切ったようにずっと胸に秘めていた言葉が溢れ出す。 「新一、すげー好き。友だちじゃ足りない。もっと欲しい」 「……っろば…!」 「お前も、そうだろう?」 数センチの距離で、逃げ場のないよう頬に手を添え、視線を合わせて問いかける。 暫く呆然として、次第に瞳が潤み始めた頃、工藤は漸く観念して首を縦に振った。 「キス、してもいいよね…?」 聞くの遅すぎるな…そう思いながら今度は噛みつく様に工藤の唇を喰らう。 首が引き寄せられる感覚がして、工藤の腕が首に回っているのだと知った。 その微妙な重みを、俺はとても幸せに思う。 「見つけたなら、先にそれ言えよな……」 「ゴメンって」 落ち着きを取り戻した俺が今日の獲物、パンドラを渡すと、工藤はじと眼で俺を見ながらそう言った。そして誤り倒す俺に、余計な心配したじゃねーかよと頬を染めながら言う。 全てが可愛くて仕方がなくて、また手が伸びそうになったが、パンドラを見つけるまでが目的ではない。 本当に何もかも終わる時まで、身体で愛し合うのはお預けだ。 fin (060604) |