15. 鏡
(双子パラレル)





 両親が不在の夜は、俺たちにとって大切な、愛を確かめ合う時間。

 俺たちは朝、同じ家から違う高校へ行く。どちらも同レベルの進学校なのだが、新一はブレザー、俺は学ランで違う高校なのは一目瞭然だった。それに、電車の線がまるで違うから、玄関を出て数分で新一と別れなきゃならない。
 進路を決める時期にお互い気持ちを自覚してしまったのがそうなった原因だ。その当時、俺と新一の間はどこかぎこちなくて、一日に会話らしい会話をしない日もよくあった。当然、互いの進路のことも聞かず、人づてに聞いた新一の志望高校が自分と違った事に酷く安堵したものだった。今ではそれを後悔しているけれど。

「新一、傘持って行かなかったの?」
「学校に忘れた…」
「色っぽいから俺は嬉しいけど。風邪ひくから早く風呂入れよ」

 意味深に笑って新一の濡れた頬を撫で、ネクタイを引き抜くと、俺からの挑発を感じ取った新一が、うっすら頬を染めて無言で脱衣所に向かう。
 雨で体に張り付いたシャツが、そうでなくても細い新一の線をさらに細く、艶やかに見せていた。それは俺のオスを煽るに充分で、今シャワーを浴びている新一のことを考えるだけで下肢が熱を帯びるのがわかる。
 今夜は十日ぶりに新一を抱ける日。新一の方も少なからず期待があるのだろう。そうでなければあの眼はない。俺の理性を剥ぐ様な、あの淫らな双眸は。

 風呂から上がった新一と簡単に夕食を済ませて、今度は俺が風呂に入って新一の部屋に行く。リビングの照明が落とされ、玄関の鍵がかかっているのは、新一からの部屋にいるという合図だ。見ると冷蔵庫の飲料水が一つ減っていた。きっと新一が部屋に持って上がったのだろう。

「入るよ」

 軽くノックをした後、返事を待たずにドアを開けた。
 このドアがちょっと前の俺には曲者で、これほど重いものが他にあるだろうかと思っていた時期もあった。今では懐かしくもあるけれど、あの当時は本当に苦しんでいた、二人とも。高校に入った直後、ほんの些細な切欠でほぼ開かずの間と化していたこの部屋に数年ぶりに踏み入った時、俺と新一は兄弟の一線を越えたのだ。

「待っててくれたんだ?」

 ペットボトルをベッドサイドに置いて、ベッドの上に座った新一がこちらを見る。暗い部屋に二つの点が妖しく光っている。それを猫のようだと思いながら、俺は部屋の明かりは点けずにそのまま真っ直ぐ新一の側まで歩いた。

「新一?」
「快斗、早く…」

 そっと上げた新一の手は、迷うことなく俺の腕を掴んで引いた。風呂上りで火照った身体に冷たい新一の指が心地好い。尤も、その新一の指もこれから直に熱くなるのだが。

「新一、今日は時間あるから、ゆっくり愛し合えるよ」
「………ん」

 ベッドに身体を横たえながら新一の耳に囁くと、余裕の無い新一はぎゅっと俺の上着を掴んで先を促す。今日の新一はやけに素直で甘えたがりだ。早くも首に腕を回してキスを強請る姿態は俺を煽ってやまない。久し振りにあいた日数のために肌が俺を求めているのだろうか。

「んぅ………っふ、……あっ…」
「新一の口ん中、コレの味がする」

 近くにあったペットボトルと同じ味の新一の口腔を思う存分堪能して、涙の溜まった目尻を舐め上げる。肩で息をしている新一は、シーツの上に髪を散らせて濡れた瞳で俺を見た。胸と下肢に這っていった手を動かせば、どうにもならない快楽に目蓋を伏せて唇を噛む。頭を振る度髪が乱れ、シーツの上に散る。
 そうなると鏡を見ているようだ。こうして新一を組み敷いているといつも思う。新一のほうが断然綺麗で可愛いが、親しい人間にしか見分けられないほどに俺たちは似ている。俺の下で乱れていくのは、確かに同じ顔を持った血をわけた双子の兄弟なのだ。

「ん、………快、斗…?」
「パジャマ、脱がせっこしようか」

 手を止めた俺を新一が不思議そうに見たのでそう言ってみた。どちらも寝巻きを着たままの状態だったので、俺の方から既に脱げかかっている新一の上着のボタンに手をかける。すると新一の方も俺の趣向に乗ってきて、くすくす笑いながら俺の衣服を剥ぎ取っていく。

 背徳と云う言葉から眼を背け、今日も俺たちは何度も身体を重ねるだろう。




fin









いつかやってみたかったツイン設定(060528)
BACK