10. 探し物





「おっ、今日も載ってるv」
「あら、本当。相変わらず綺麗な子ねぇvv」
「おい、ちょっ…母さんは見るなよ!」
「いいじゃないケチー!どうせまた切り取って隠しちゃうんでしょ?」

 たりめーだ!
 快斗は新聞を舐める様に見た後、鋏で丁寧に新一の形を切り取った。記事の部分は覚えたので必要ない。
 キッドとして小さい体を助けていた頃には新聞各紙から姿を消していた彼、工藤新一。その彼が再び紙面を賑わすようになったのはつい最近のことだった。

(ちゃんと戻れて良かったな…)

 コナンの時にはもっと存在を近くに感じれた人。快斗には友好な関係を築けていたという自信はあった。だが、元に戻り不自由のなくなった彼に自分を必要とする理由を見出せなかった。そして、華麗に成長した彼に以前とは違う感情が芽生えたことに気付く。そのために快斗はキッドの現場での不必要な接触を避けるようになったのだった。
 再度新聞に目を落とす。殺人事件を解決した旨の記事にあった新一の表情は硬い。取材のカメラから逃げるように顔を背ける写真を見て快斗は頬を緩めた。

(あーもうすげー可愛いv)

「あんたいい加減遅刻するわよ!」

 新聞から離れない息子に母の言葉がかけられた。


「快斗遅ーい!!」
「うっせーアホ子」
「なによー、今度のショー見に行ってあげないからねー!」
「いいぜ別に。俺一人のじゃねぇしー」
「ふーん、来るなって言われても行くもーん。だってあの工藤新一君が来るんだよ!」
「は!!?」
「お父さんが言ってたの。工藤君がチケット欲しがっていたからあげたって。出演者が豪華ですぐ売り切れちゃったもんねあのチケット」
 実物の工藤君見たこと無いから会場行ったら絶対探すのー!
 青子がぺらぺらとお喋りを続けるが快斗の心此処に在らず。

(あの名探偵がー!?どうする俺どうするんだ俺!?切欠作って黒羽快斗として話せるチャンスじゃね?ああ、駄目だ考えただけで緊張する…あの綺麗な顔前に何話すっつーんだよ?しかも俺は怪盗キッド…)

「もしかしたら工藤君とお話できるかもしれないよ青子!」
「明日から練習メニューの強化だな…」
「そんでお友だちになれちゃうかも〜v」
「どんなマジック好きなのか調査も必要だ…」

 江古田の校門前まで、きゃぴきゃぴ騒ぐ女の子と顔面蒼白な男の子の噛み合わない会話は続くのであった。





fin









(060408)
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