09. 春夏秋冬
(シリアス気味です)





「お早う、新一。今日は暖かいね」

 ベッドで心地良さそうに眼を閉じる新一を見てカーテンを開けた。
 外は日が昇り、ここ最近では珍しい春の気候だ。窓を開けると涼しい風と仄かな緑の匂いが部屋に流れ込んでくる。眼を閉じてそれを吸うと、濁りかけていた思考がクリアになった気がした。
 持って来た花束を取って、備え付けの水道で花瓶に生けると無機質な部屋が一気に春らしく華やかになる。風で倒れない位置にそれを置き、そっと新一の横の椅子に腰掛けた。
 頬を手のひらで包み、撫でる。片手は布団から出た新一の手と重ね合わせる。少し窪んだ目蓋を親指で撫で、顔を寄せて口唇を重ねた。触れるだけのキスのあと、眼を閉じても変わらぬ新一の美貌に暫し魅入る。

「勝手にしちゃってごめんね」

 御伽噺みたいに、簡単に目覚めてはくれないか…
 返事のない相手に独りごちて、重ねた手の指を絡ませる。規則正しく息を吐き、仰向けに綺麗に眠る新一は微動だにしない。

 もう春なんだね。
 一年だ。ここで新一と会うようになってから。その間この病室の窓からはいろいろな風景が見えたものだ。去年の今頃は桜が満開で、綺麗だねって言って一緒に見ていたね。夏には木々に緑の葉が生い茂り、蝉の鳴き声が五月蝿いとほとんど窓を閉めていた。紅葉で辺りが赤や黄色で彩られた時、新一はもうほとんど声を出せなくなっていて、眼だけで俺に感情を伝えてくれたね。窓の外が真白になったら俺は一人寝ができなくて、いつもここで新一と一緒に寝てた。

 新一、また春がくるよ。
 今年も一緒に桜を見ようね。




fin









BGM:Last Smile / Love Psychedelico (060423)
BACK