07. 琴





「黒羽って温厚だよな」
「へ?」

 ホームルームが終わって、部活のない生徒が教室でたむろしていた。どうでもいいことを話していた時に、その中の一人が俺に言う。と同時に回りにいた人間も口々に喋りだした。

「あ、俺も思う。話しててムカついたことないし」
「機嫌悪そうなときってのもないよなー」
「女にモテて勉強もできるのに嫉んでる奴いねーもんな」
「はぁ…」

 なんだか話が変な方向にいってるなぁ。褒め殺してなんか奢らせる気なのか?
 今日はこれから新一宅に出張デートだから早く帰りたいんだけど。

「で!そんなお前が彼女いないというのはやっぱり嘘だろう!?」

 なんだ、結局それなのか。
 少しほっとして、俺は食いつくように問い詰める級友達にお決まりの台詞を言って追求をかわした。
 そして、ささくれた心で向かったのは大切な恋人の家。



「着いて早々不機嫌そうなやつだな」

 ドアを開けた新一の第一声がそれだった。スリッパを勧めるでなく、そのまま背を向けてリビングへ一直線。この様子だと大方読書の最中だったのだろう。

「新一、ちゃんとご飯食べた?」

 リビングに入ると、案の定ソファに座って分厚い本を読んでいる新一。片付けた形跡のないキッチンを見て言うと新一がじろりとこちらを睨む。

「ムカつく…」
「やっぱり食ってないんだ?」
「おまえ、小言多すぎ。そんなカッカしてたら身体に悪いぜ」
「新一だからなんだけど」
「飯なら一緒に食えばいいだろ!」
「あ、一緒に食べたかったんだ?」

 からかいを交えて言うと、新一の口から性格悪ぃという言葉が漏れる。

「新一の前だけだよ」

 可愛くない顔をしている恋人の頬に手をやって、ちゅっと口唇を奪う。

「性悪、タラシ、変態、エロ、ハゲ、馬鹿、それから…」
「ははは、すげー罵倒の嵐!」
「けなしてンだから笑うな」
「だって嬉しいモン」
「………?」
「そういうとこ晒せるの新一だけだから。ハゲじゃないけどね今のとこ」

 だから、これからも、俺が殻に篭りそうになったら、琴線を撫でて俺を起こしてよ。




end









自己満足色強めです(060306)
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