|
06. 祭り事 イライライライライライラ…… 朝からずっと気分が悪い。天気の良い休日で、これから彼女と街でデートだというのに。それもこれも全部新一のせいだ。 「快斗ー?」 「あっごめんなんだっけ?」 苛つきを表情には出さずに焦って彼女に返事をした。お洒落で可愛い子だけど、新一が絡むと途端にヒステリーを起こす。考えてみれば今までの彼女も新一に対する目が厳しいというか敵視している子が多かった気がする。 中学生の時初めて彼女ができてから途切れたことのない俺だけど、自分から告白したことはない。大概女の子のほうから言い寄ってきて、嫌いじゃないから付き合う。それだけ。今この隣にいる子が別れようって言い出しても何とも思わないだろう。 浅い付き合い、いい加減な態度、最低だと思うけど今更だ。 だから、新一が首をつっこむことなんてないのに。 「ね、快斗。あれ工藤くんじゃない?」 きたか… 絡めた腕を引く彼女に、何故か湧く嫌悪感。指差した方向を見ることに対する拒否反応。 「女の子と一緒だね。工藤くんって彼女いたの?」 「ああ……」 「そうなんだー」 彼女は様子を窺うように呟くと、数メートル先を歩くカップルをじっと見ていた。 新一の提案はこうだ。 新一は女友達に頼んで彼女の振りをしてもらい、それを俺の彼女に見せて、新一に恋人がいると思いこませる。そして、俺にも新一にも彼女がいるんだから一番大事なのは恋人に決まっているだろうと言い含める。 俺の一番は新一ではなくて、新一の一番も俺ではないと。 女は自分が最優先されていると分かれば安心するもの、らしい。新一曰く。 「綺麗な人だね。工藤くんにぴったり。ね?快斗もそう思うでしょ?」 「そうかな…」 新一の作戦どおりにするならここで彼女に言わなくてはならない。俺が一番大切に思っているのは君だよと。 「んなワケねーだろ……」 「なに?快斗?」 『おい、お前らの次のデートの日取り教えろよ』 『え、なに新一どうするつもり?』 『俺が彼女安心させてやるよ』 そんなこと言ったって、新一、こんなの俺が嫌だって。 「ごめん、別れよう」 「え…?何言ってるの快斗……」 「俺、君を一番に考えられない」 目を見てそれだけ言うと、地面を蹴って駆け出した。 まっすぐ前に。新一の背に向かって。 女の隣で笑っていた新一が、振り返って俺を見る。その瞬間朝からずっと胸を占領していたもやもやが晴れていった。 「ばっかじゃねーの!」 「また怒ってる…」 「たりめーだろ!俺の計画台無しにしやがって」 「俺は最初からいいって言ったもん」 「…んで、彼女は?」 「ああ、もう別れたから」 「はぁ!?」 くるくる表情がよく変わる。驚きに目を見開いたあと、新一は、もっと真面目に付き合えだとか、女を大切にしろだとかくどくどと説教を始めた。ほとんど入っていないコーヒーをスプーンでしきりにかき混ぜては眉間にシワを寄せている。 「だって俺新一のほうが大切だって気付いたから」 カシャン! 新一がスプーンを落とした。 「なな何言ってんだよ、俺なんて多少ケンカしても縁が切れることなんてねーんだからさ、付き合ってる子を大事にしろって」 「今日一緒にいた子と付き合ってんじゃないよな?」 「人の話を聞け…」 「付き合ってんの?」 「振りしてもらっただけだって…」 ずず、と新一に詰め寄ると、観念した(諦め?)ように新一が息をついて言った。だけど、新一を連れ去った時のあの子の目を見ればわかる。新一に惚れてるんだ。 「付き合ってって言われたらどうする?」 「断るんじゃね?」 「ほんとに!?」 「ああ、俺はお前と違って誠実だからな。好きでもない子と付き合ったりしない」 「好きな人だったら付き合うの?」 「ああ、でも有り得な…」 「俺は?」 ガシャン! 今度はカップをソーサに落とした。 「ね、俺と付き合おうよ」 新一の赤い顔を見れば答えは一目瞭然だった。だけど新一からは予想に反する答えが返ってくる。 「いや、いい」 「いいって何!?」 「俺、お前好きだけど幼馴染みで満足だから」 なんだかとっても色気のない会話。人生初の告白を、長年連れ添った幼馴染み(しかも同性)にしているのに。 「俺もう今の環境に慣れてるからさ」 赤い顔をしたのは一瞬で、しれっと言う新一はとても淡白。俺への好意も確かに感じるのに…何ていうか覇気がない?それが恋する男の態度なのか? 友だちの期間が長すぎたのかもしれない。コーヒーカップを直している新一の口からは早く次の彼女作れよとの言葉が出る始末。 もしかして、俺時間かけすぎた? 頑なな新一の態度を変えるのは、けっこう大変…かもしれない。 end アンハッピーにしたくなかったからこんなになったけど…題に合ってないなー(今更 (060310) |