Time limit









ここは警視庁の一室。

「あと1分」
「うー………やっべーかも…」
「ありゃ〜、時間足りねーな、それじゃ…」

静かな部屋に響くカチャカチャとした金属音と無情にも時間を告げる声。そしてそれに唸る少し高めの声。最後に様子を見て率直な感想を漏らす人物。

「そこまでだ」
「ええ!?ちょっと早くね?松田さん!」
「言掛りはみっともないぜ、高校生探偵?」
「まぁ、そんなに苛めるなって!ここまで出来れば大したもんだよ」
「さすが、研二さんは優しいなぁv誰かさんと違って…」
「ふん、オレならこんなちゃちな仕掛け3分あれば充分だ」

新一は松田の言葉にぶすっとした顔を見せるとピンと閃き、松田に裏のある笑顔で言う。

「なら松田さんやって見せて下さいよvそれで出来なかったら僕の言う事一つ聞いて下さい」
「おいおい、新一無茶だって!松田はこんなでも処理班のエースなんだからさー」

萩原は純粋無垢であろう探偵が松田の毒牙に掛かるのを防ごうと新一を諭すが、そこは頑固強情な工藤新一、一度言ったことを撤回することはない。それが松田の実力を認めてしまうことになるなら尚更だ。

「いいぜ、その変わりオレが3分以内に解体成功したらお前がオレの言う事聞けよ」
「いいですよ」

余程自信があるのか新一は余裕の表情で了承する。
この勝負、結果は火を見るより明らかだ。萩原は負けるであろう新一に同情しつつ、確実に処理をする同僚の鮮やかな手並みを見遣った。


「……あと1分」

早くも作業を終えようとしている松田を見て新一は沈んだ声で告げる。先ほど言われた時間を告げる声には間に合わない自分に対する笑みが含まれていたことを思い出し、さらに悔しさが増す。

「終わったぜ」
「おー、残り45秒か。相変わらず手際がいいな」
「こんなモンんで5分かかってたら現場で即あの世逝きだろ」
「……遠まわしに俺に死ねって言ってるように聞こえるんですけど」
「さぁな」

口角を上げて松田が皮肉に笑い、二人が触っていた装置を片付けた。

「今度は絶対勝ちますから」
「爆弾処理でオレに勝とうなんざ1万年早いんだよ」
「そうやって余裕ぶっている内に追いついてやりますよ…」
「まぁ、二人とも日々精進あるのみって感じでもっと穏やかにさ…」

間に入った萩原は二人の火花をさっさっと散らせ、処理班の部屋から追いやった。

やれやれ、どっちも負けず嫌いというか餓鬼というか…仲が悪いわけじゃないんだがなぁ
しかし松田のやつ、他のやつらには100万年早いとか言って馬鹿にしてたけど新一には1万年なのか?単なる言葉の綾か意識的に新一は筋がいいと見てるのか…

二人の後ろで廊下を歩いていると尚も何か言い合う二人の姿。きっと「言う事を聞く」ことについて揉めているのだろう。

「オレにも教えろよー、陣平ちゃんは新一に何聞いてもらうんだ?」
「聞いて下さいよ研二さん!松田さん俺に朝ごはん作れって言うんですよ、めんどくせー」
「…松田、新一にそんな奥さんみたいなことして欲しいのか?」
「は?こいつ朝弱いから嫌がらせに決まってんだろ?オレの家からこいつの高校まで遠いしな」
これも嫌がらせの一つ。
「第一俺自分の朝ごはんも作らないのに何で松田さんのを作らないといけないんですか!?」

勘弁してくれと新一が抵抗していると松田は切り札を出す。

「負けた上に約束まで破るなんて、日本警察の救世主が聞いて呆れるぜ」
「なっ、……………わかりましたよ…やればいいんでしょ、やれば!」

負けた事実は認めざるを得ない為、新一は投げやりに告げるとプンプンと足音を立てて帰路についた。





* 数日後


「おう、松田!今日新一が朝飯作りに来た日だろ。何遅刻してきてんだよ?」

萩原は遅れて出勤した同僚に元気に声をかけると肩をバンバンと叩く。

「朝から煩せぇな…あいつはちゃんと来たぜ……飯も作ってったし…」
「それで何で浮かない顔してんだ?朝楽できて良かったんじゃねーの?」
「萩原、………オレは試合に勝って勝負に負けたみてーだ…」

ぐったりと疲れたようにする松田を見て、あの年下の名探偵にしてやられたのかと松田に同情する。
ハハハ…と渇き笑いをする松田に萩原はただ頑張れよ…と言う意外なかった。



その後気になった萩原が松田に何をしたのか聞いたが、新一は唯こう言うだけだった。


「俺をただでこき使おうなんて1万年早いんですよ♪」





.end?















一万ヒットありがとうございましたv
新ちゃんが何をしたかはご想像におまかせです。