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「今晩はv」 窓の縁に足をかけ、カーテンレールに摑まった怪盗が陽気に告げた。 「何か用か?」 ベッドで横になり小説を読んでいた新一は緩慢な動作で起き上がり、突然の来訪者に驚くこもなく答える。窓の縁に立つ白い怪盗は背後に月を従え、光の具合で新一の場所からでは顔が良く見えない。 「上がってもよろしいでしょうか?」 ニコリと微笑んだ怪盗は白い靴を片手に小首を傾げる。 「好きにしろよ」 「では失礼しますね」 「で、何しに来たんだ?」 怪盗に配慮して部屋の電気は点けないでいる。窓から入る明かりで怪盗の輪郭だけがはっきりと目につく。ふとモノクルから下がったクローバーが揺れた。 「名探偵…今日が何の日かご存知ですか?」 「今日…は7月7日か。………ああ、七夕?」 「ご名答」 その答えに怪盗は口角を上げて手首を返す。目の前に現れた真っ赤な薔薇に新一は呆れた表情をかえした。 「んで、何で俺の家に来たんだ?」 その薔薇を手にとって、怪盗を見上げて問う。 「一年に一度の逢瀬を遂げる二人にあやかろうと思いましてね」 「意味わかんねー」 「フフ、いいんですよ…こうして話が出来るだけで…」 陽の下で逢う事の赦されぬ二人だけど… 天の川の下、天上の二人の様に手を取り合っても罰は当たらないだろう? end |