thunder
現場に来ると思っていた名探偵が来なかった。盗聴器の様子では嬉々として暗号を解き、盗みに入る直前までは確かに現場の指揮をしていたのに。 「来ないのなら、こちらから伺いましょうか…」 待っている間に宝石の確認をして目当てのものではないことがわかった。ここで本来ならば名探偵に返すのだが、彼は今不在。だからといって警察に返しに行く気にもならないし、ぽいっとその辺に捨てるのも憚られる。 キッドは雨が降ってきそうな空を見上げてハングライダーを広げ、米花へと進路をとった。 飛びながらはたと気付いた。工藤邸に行くのは初めてだ。厳密には何度か不法侵入をしたことはあるが、主に直接会いにいくのは初めてなのだ。 連絡くらいしておくべきですかね… 律儀にも携帯(勿論特殊)を取り出し工藤邸の番号をプッシュする。 『・・・・・・・・・はい・・・』 「・・・もしもし、工藤くんかい?」 電話越しでもわかるほど沈んだ新一の声に驚きながらも彼の馴染みの刑事の声を使って様子を窺う。 『あ、・・・・・・高木さん・・・ですか・・・?』 「そうだけど、どうかした?具合でも悪いのかい?」 『いいえ、大丈夫です・・・・・・・・・』 「そうかい?実はちょっと聞きたいことが・・・・・・」 『・・・・・・ぅっ!・・・・・・・・・やだっ・・・こ・・・ぃ・・・』 「名探偵!?」 『や―――――!!』 「名探偵、何があったんですか!?」 尋常ではない彼の様子にキッドは高度を下げて工藤邸へと急ぐ。 『も・・・っ・・・・・・ヤダ・・・ぁ・・・』 「すぐにそちらへ参ります。落ち着いて待っていて下さい」 ピッと切った電話を握り締めて昂ぶった感情を落ち着かせる。冷静を欠いた状態では彼を助けられない。彼の身に何が起こったのか、考えるだけで背筋が冷たくなる。誰かに危害を加えられているならば、その相手の命は保障できない。今まで感じたことのない怒気を抑えながら更に落下速度を速めた。 名探偵、どうか無事で・・・・・・! 雨がポツポツと降り始め、どこかで雷鳴が響く中、キッドは工藤邸の屋根に音もなく着地した。 二階の窓からそっと中に入った。二階は暗く人の気配はない。下に降りれば、一階のリビングの明かりが煌々と照っている。新一はそこだろうと慎重に中の様子を探る。と、開いた扉から見えるのはソファの上で膝を抱えて小さくなっている名探偵の姿。 「名探偵・・・・・・」 中に他の人間の気配はないので、反応を返さない新一に不安を抱きつつも近くに寄って回りの様子を見る。 新一の回りには床に落ちて割れたグラスと散らばった書類。新一を見ると小さく肩を震わせていたが衣服の乱れや怪我をした形跡はない。 「名探偵、私です。わかりますか・・・?」 「・・・・・・きっ・・・・・・ど・・・」 「良かった、貴方が無事で・・・」 安堵すると同時に彼を抱き締めていた。すっぽりと中に納まる新一の身体に言いようのない愛しさを感じながら背中をあやす様に撫でる。 「なんで・・・・・・家に・・・?」 くぐもった声で言う新一に抱き締めていた手を離し顔を覗きこむ。 「貴方のことが心配で参りました。先ほど、電話した時に何があったのですか?」 「・・・なんにも、・・・・・・ぅ・・・っ!」 皆まで告げずに名探偵は耳を塞いだ。頭を抱えるように必死で塞いではふるふると身体を震わせる。 「どうかなさいましたか・・・?」 あまりの恐怖にパニックを起こしているのだろうか。それほど酷い目に遭ったのか・・・ 「キッド、・・・お願いっ・・・・・・・・・」 そう言って新一はキッドの背中に腕を回して胸部に顔を埋めた。ぎゅっと力を込めて縋りつく新一をただ見ているわけはなく、キッドもその肢体を思うがまま抱き締めた。 暫く無言で抱き合っていて、ふと気が付いた。新一が時々びくりと肩を震わせる時、それは、雷鳴が轟いた時と同じであった。 「もしかして、雷が怖いのですか・・・・・・?」 「・・・・・・・・・・・・ぅん」 ああ、神よ。こんなに可愛い17歳の美少年がこの世にいていいのでしょうか? 「・・・・・・ゃっ!」 「大丈夫ですよ、名探偵。鳴り止むまで側にいますから」 抱き付かれて理性は危ういが、怖がる新一相手に手を出す気にはなれない。そんなことをする奴は鬼というものだ。 顔は胸板にしっかりと密着していて見えないので、目下の小さな頭を撫でるとサラサラな感触が伝わる。新一の耳に雷鳴が聞こえないように頭を包むように後頭部と背を優しく撫で続けた。 どのくらいそうしていただろうか。お互いの温もりを感じながらの抱擁は心地が良過ぎて、ずっと離れたくないと思ってしまう。 「名探偵、もう止んだようですよ・・・」 名残惜しく感じながらそう新一に声をかけたが 「・・・・・・・・・・・・」 「寝てしまいましたか......」 自分が来るまではずっと一人で耐えていて張っていた気が一気に緩んだのだろう。新一は肩に寄り添ったまま寝入っていた。穏やかな寝顔に微笑が漏れる。伏せられて光を消した瞳の下に睫毛が長い影を作っている。薄く開いた口唇からは規則的に寝息が漏れ、奇跡のようなその光景に暫し魅入る。そしてそんな彼が自分に全てを委ねている状況に一人歓喜した。 「おやすみなさい、私の名探偵」 風邪をひかないようにとマントで新一の身体を包み、頬にキスをして、再度細い肢体を腕の中に閉じ込めてキッドも眼を閉じた。 今日のお礼は頂きましたよ、名探偵? .end |
私の名探偵言うキッドさまはちょこっとキモイなと思いました。
新ちゃんが雷嫌いなのはアレですよ、・・・トラウマ(超適当)