来るな
「ただいま〜〜」
「ここはお前の家じゃないっつーの」
「そんな冷たいこと言わないでよー、新ちゃ〜〜〜んvv」
がばっと抱きついてくる重いやつをなんとか受け止めた途端に匂ってくるいつものニオイ。お前のにおいに混じって存在する気分の悪いそれ。
「げっ、酒くせー!」
そして、女臭い。
なんとか半酩酊状態の黒羽をリビングのソファに運んだ。人の気も知らないで目の前のやつは酔っ払いによくある笑い上戸のしゃべり上戸になっていた。はっきり言ってシラフの俺にはとても辛い。あんまり五月蝿いから水を一杯飲ませてやったら少しは落ち着いたようだ。
「泊まってっていいから、もう寝ろよ・・・・・」
「えー!オレがせっかく工藤に会いに来たのにもう寝ろって言うの?めんどくせーコンパで疲れてたのにわざわざ遠いここまで来たんだよ?もっと話そうよー」
酔いはあんまり冷めてなかったらしい。いつもより知性的な喋りができなくなっている。(いちもはふざけてる中にも少しは知性を感じるらしい)
「めんどくせーなら行かなきゃいいだろーが」
「だってオレ、マジシャン志望だよ?コンパなんて職場みたいなもんじゃん?エンターテイナーとしては盛り上げ役するのはけっこう修行になるしー」
酒の席とマジックの会場じゃ違うだろと思ったが言葉には出さなかった。
「はいはい、つーかさ、何回も言ったけどコンパの日は家に来んなよな」
「だって理由聞いても工藤教えてくれないんだもん。なんでコンパの日はダメなの?」
「それは・・・・・・・」
黒羽が女の臭い匂いつけてくるからだなんて言えない・・・。でも嫌なものは嫌なんだ。自分の知らない黒羽の付き合いがあるのはわかる。けど、顔も見たことないような女たちと楽しく話してきた帰りに俺のとこに寄るなんて拷問に等しい。何度か女に迫られたこともあると言っていた黒羽。きっとその匂いも必要以上にくっついてきた女がつけたものだろう。
「工藤ー、おーい」
呆けていたらしい俺に手をひらひら振っている黒羽を見たときに余計なものまで目に入ってきてしまった。
黒羽の襟元についた口紅―――――。
本人は気付いていないのだろうけど、今の俺にそんなもの見せないで欲しい。溢れ出す嫉妬心に自分が制御できなくなる。
「理由なんてどうでもいいんだよ。今度来ても入れないから。つーか、今日も帰って。タクシー代ないなら出すからさ」
さっきとは別人のように冷たい新一に快斗の背筋がヒヤリとした。
「え、あ、・・・・・・ごめ・・・」
瞬間見た新一の眼は快斗が今まで見たことのないものだった。感情が一切感じられない華氏零度の眼。ここまで彼に鉄壁の仮面を被らせたのが自分であることに快斗は大きなショックを受けていた。
いつだって工藤は口調は乱暴でも本当はとても優しくて、オレの前ではストレートに感情を表していてくれたのに・・・・
快斗が酔いを一気に冷まし、ショックを隠しきれないでいると、新一は快斗が飲んだ水のグラスを持つとキッチンへと行ってしまった。
こんな風にしか自分を抑えられないなんて・・・。
黒羽に八つ当たりするなんて最低だ。あいつは悪くないのに。でも今の黒羽は見てられない。これ以上近くにいるといつかあいつに気持ちを押し付けてしまう。こんな気持ち伝えるべきではない。あいつは普通に女と付き合って幸せそうにしているのが似合う。だけど、それに俺は耐えられない。
暫くすると玄関のドアの音がした。黒羽が行ったのだと思うと安心と絶望が一度にやって来てその場に座りこんでしまった。
――――――――――黒羽、もう来るな。
そう思って項垂れている俺の足元に真っ白な鳩が現れた。まさかと思って顔を上げたそこには・・・・・・俺の望んだ人物。その笑顔に恋焦がれていることを知らないヤツ。
「工藤、やっぱり戻って来ちゃった」
まだ友達なので感情の起伏が激しい感じで。
微妙に新快ちっくで凹みますた・・・。
ちなみに新一さまは来るなと思いながらほんとは居て欲しくて仕方なかったので、快斗が戻ってきたのはそれでいいんですよーってことで。
なんだかただのお馬鹿さんにもみえるので黒羽のフォロー