1.second encounter







じゃらじゃらと音を立ててテーブルの上に広がるのは、今食べた朝食より多いのではないかと思わせる大量のクスリ。
一つ一つ水で流し込み、ひたすら飲む。量の多さに辟易したのは最初の3日間だけだった。一度面倒に思い飲むのを怠ったところ身体中が悲鳴をあげて立っているのもままならない状況になったのだ。それ以降クスリは欠かさず飲むようにしている。
払った代償は大きいが、それでも元に戻る事を選んだのは自分だから。


「お前は俺の主食だな・・・・・」

自嘲してそれのビンを持つと8時を知らせる時計のベルが鳴った。

「初日早々遅刻はしてらんねーな」

何事も初めが肝心、と久々なブレザーに袖を通し鞄を片手に玄関へと向かった。








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「アホ子ー、オレの新聞知らね?」
「あんた、まった学校で新聞読んでたのー!?恥ずかしいからやめてよっ!」
「なーんでおめーが恥ずかしがるんだよ?」
ぷりぷり怒って新聞を手渡す青子に軽口を叩いて、新聞を広げた。一面を広げた途端飛び込んできた人物に顔を顰める。

「げーぇ、朝からヤなもんみちった」
「あーっ!工藤新一じゃない!かっこいいー、ちょー美形!」
「お前眼悪いんじゃねーの?これのどこがいいんだよ?」
「どこを見てもいいじゃない!そーいう快斗はどうして工藤くんのこと嫌ってんの?」
「性格悪そうじゃん?スカしてて感じわりーしぃ。ぜってーお友達になりたくないタイプ」
「そうかなぁ、警察のお手伝いしてるんでしょ?青子はいい人だと思うけどなー」
「そんなのただの自己満足だろ」

これ以上見る気がしないのでページを捲って嫌いなその人の顔を視界から消した。青子はまだ探偵の味方をしているが放っておく。

マジむかつく。仕事中でもないのに顔出すなっつーの。ただでさえ顔似てるとか言われて迷惑してんのによー。
今度キッドの現場で邪魔しに来たら軽く脅しでもかけておくか。

物騒なことを考える快斗だが表面上は笑顔で級友と話していた。体に染み付いたポーカーフェイスはこんな時にも力を発揮する。






すぐに新一との勝負のときは来た。
最近は予告を出せば必ず新一が来るようになっていた。予告状を難解にせずとも彼が来るようになったのは白馬が居ないためである。それならばと警視総監の命により新一に白刃の矢が立ったのだ。その白馬はというと、快斗の手によって暫く邪魔されないようにと排除されていたりするのだが。


「今回も無駄な努力してるねぇ・・・どうせオレに逃げられるくせに、馬鹿なやつ」
双眼鏡の向こうには本人とひとまわり以上離れているであろう警官たちに指示を出す探偵の姿。学校帰りのためか制服のままである彼を嫌そうに見る中森もいる。

あの探偵が嫌いだって点では話が合いそうだな、中森警部?

双眼鏡をしまいバサリとシルクの布を翻せば白い罪人が現れる。羽を広げて現場へと飛び立とうと地から足を離す。
その瞬間快斗の中で妙な予感がした。盗みを失敗するわけではない、まして命の危機というわけでもない。なにか自分にとってとても大きな事件が起こるのではなかという、不思議なそれは大嫌いな探偵に関わる事だと直感で感じていた・・・・・











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「中森警部、ここなんですが・・・・・」
表面上は普通に念入りに現場の警備を強化する新一だが内心身体の違和感に焦っていた。
くそっ、こんな時に・・・・・!

発作の前兆。予想に反しやって来たそれに毒づき、なんとか警備を形にした。発作には規則的な周期があり、それに沿って起こる筈であった。だが、今回はまったく予想外の発作で、痛み止めのクスリも足りない。警部と話をしている間にも徐々に痛みが強くなってくる。

今日は早めに帰らねーと、犯行時間まで持たないな・・・・・

「すみません、中森警部。ちょっと今日体調が優れないので僕はこれで失礼しますね」
「お、おお。そうか、ご苦労さん」
警備に躍起になって気がつかなかったが彼の顔色は相当悪い。それに気丈な彼が自分からこんなことを言い出したのだから本当に辛いのだろう。いくら気に入らない相手だからといっても相手はまだ十代の子供なのだ。中森は彼の大人びた雰囲気にそれを忘れ、ムキになっていた自分を心で恥じた。

「ちょっと待っとれ。部下に送らせるから」
「いえ、結構ですよ。もうすぐキッドも来ますから、警備のほうをお願いします」
ぺこと頭を下げてしっかりとした足取りで新一は館内から出て行った。











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なんだよ、あいついねーじゃん・・・・・

中森の奮闘も虚しく、キッドは獲物を手にして辺りを見渡し、舌打ちをした。
白馬同様に暫くは邪魔ができないようにしてやろうと様々な仕掛けをしていたのだが、ターゲットがいないのではその意味がなくなってしまう。白馬よりも手強いと踏んで気合を入れたトラップを作っていたキッドは自然に不機嫌になる。

「中森警部、あなたの嫌いな工藤探偵の姿が見えませんが?」
「あいつならもう帰ったわ!そんなことより手に持っているものを返さんか!」
「それは致しかねますね」
宝石をぱっと消し、マントを翻して窓から飛び降りる。
中森の怒号が響く中、キッドはこのイライラをぶつけるべく新一の家へと飛び立った。






初めて見たけど、無駄にでけー家だな。
キッドは工藤邸の屋根の上で胡坐をかいて新一を待っていた。帰ったという中森の言葉を聞いてここまで来たのに家の中に新一の気配がないのだ。

「せっかくこのキッド様が参上したってのに何やってんだよ、あいつは」
これじゃただのストーカーじゃないか・・・・・

いい加減帰ろうかとキッドが腰を上げかけた時、門の開く音とともに新一が隣家から姿を現した。片手に大きな袋を持ってこちらに帰って来たので、キッドは気配を断って身を隠し、新一が家に入るのを待った。


さて、こっからが本番だな。

ピンポーン・・・・・

ベルを鳴らすとドアの向こうで足音がした。重い足取りであるのは彼が疲れているからなのか。

ガチャと玄関のドアを開けた新一は目の前の人物に眼を見開いた。

「どうも」
「なっ・・・・なんで?」



不自然なほど満面の笑みを浮かべてそこに佇むのは今日は対峙する事のなかった白い怪盗であった。



















to be continue.....




















なんて嫌なやつ、快斗くん。でも次回新一も酷いこと言います。(予定)