|
ある方の御召し物 ガサガサ… 人の部屋に来るなり何やってんだこいつ? 新一は笑顔で部屋にやってきた途端紙袋を漁り始めた恋人の動向をじっと見ていた。 「あ、あったあった!」 「何だソ……レ……」 嬉々として快斗が手に持つやたら黒くて小さくまとまった布。よもやそれが身に付ける物だとは思いもしない新一であったが… 「ほら!」 「………………っい!!」 マジかよこいつ…頭おかしんじゃねーの? 「可愛いでしょー??これ着て?」 彼がにへらっと広げたそれはかの歌姫が愛用している忍者もびっくり!の超ミニ着物であった。 「嫌に決まってるだろうが……」 「えー!絶対似合うって!俺が保障する!!」 「そんな保障いらねーよ。そんなモン作る暇があったら仕事したらどうだ、黒羽中尉?」 ゴゴゴゴゴと火山噴火直前な新一を前にも快斗は怯まなかった。なぜなら、 「作ったんじゃないよ!志保ちゃんから無断で借りて来たんだから!!」 だから着て!俺命がけだったんだから!! 涙目で嘆願する快斗。新一は口をあんぐり開けておめおめと服を握り締める快斗を見た。 「お前、それって盗んだって言うんじゃ…」 「い、いや…違う、よ?借りたんだよ?」 「おい、あいつ怒らせたら…」 「キャー!!言わないでー!責任は全部俺が取るから、お願いだからこれ着て!新ちゃん!」 新一はフルフルと震える快斗を見て嘆息した。 ま、いっか。こいつの勇気に免じて着てやっても… あの姫の館の無数のトラップを掻い潜り、後でどんな仕打ちに遭うのかも全て承知で取ってきたのかと思うと、着てやらねば浮かばれないような気がしてきた。それに座り込んで震える快斗はちょっと可愛い…(末期) 「一回だけだからな。着たらすぐ着替えるからな!」 「……っうん!」 やったーvと手放しで喜ぶ快斗の頭には志保への恐怖は消えていて、新一のミニ黒着物姿vしかなかったりする。 「もちろん、俺が着せるからねv」 「は?餓鬼じゃあるめーし自分でっ…」 「これちゃんとした帯締める着物なんだよ?帯の巻き方もちょっと変わってるし。新一着れるの?」 「うっ…」 「出来ないよね?じゃあさっそく服脱いじゃおう♪」 「おい!手が早すぎだぞ、お前!」 手早く白い軍服を脱がせ、下着だけ(全部脱がすと理性がもたない為)にした新一に慣れた手つきで着物を着せる。 「よかったねー、着物でvいくら新一でも志保ちゃんと同じサイズの服はきついだろうしねー?」 帯を巻きだした快斗の手つきがイヤらしいのが気になるが、思ったほどセクハラをしてこないことに安堵して、新一は帯のきつさにふぅと息を吐く。 「後は腕に黒いのをつけて、っと……はい、できたv」 「足がすーすーする…」 「…はぁ、綺麗な脚だなぁv眼福だv」 「……変態」 着せ終えた快斗は床に膝をつき、短すぎる丈から伸びるしなやかな脚に頬擦りをした。 「くすぐったいからヤメロ」 「じゃあ、ん〜」 ちゅう。 「ぎゃあ!このっ…へんたっ…あ、…っ」 「ナニをしているのかしら?」 ピシリ 地を這う声の主を見た快斗と新一は一切の動きを止めた。固まった姿は、快斗が新一の腰に抱きつき太股に口唇を這わせながら着物の裾から不埒な手を侵入させているところ、という今からナニをするのか容易に想像がつくものであった。 ニタリと笑みを浮かべた志保は徐にカメラを取り出しパシャリと二人を撮る。 「あなたたち…」 「「はいっ!」」 新一と色違いの白い着物を着た志保がカツカツと音をたてて二人に近づく。 「そのままヤってもいいけれど、それなりのモノ頂くわよ?」 「も、モノとは…?」 「そうねぇ、この写真を売ってお金にするのもいいけれど…もっと官能的なシーンがあると高く売れそうよね?」 「ダメダメダメッ!!新一が軍の奴らのオカズになるなんてっ……ぐはっ!」 「バカエースめ…」 「工藤君、その恰好で蹴っても黒羽君が悦ぶだけよ…」 はっ!と新一が快斗を見ると、痛みに涙を浮かべながらも蹴り上げた事で晒された新一の脚のつけ根に顔を崩しきっているではないか。 新一がどう怒りを表そうかと考えている隙に志保はその場もすかさず写真に収めた。 「工藤君、そんなにその服が好きなら私の代わりにプラントで歌ってもいいのよ?」 うふふとカメラを頬にあてては告げる志保を、快斗をグーで殴っていた新一が振り返る。 「いやいや、遠慮する!つーか、俺はこのバカが取ってきて着ろってうっせーから着ただけだ!」 「ひどいよ、しんいち〜」 「本当のことだろが!」 「どうやら邸の警備が甘いようね…こんな蛮族の侵入を許すなんて…」 「ごめんなさい…もうしません…」 「まぁ、いいわ。今回はこの写真とあなたの1年分の稼ぎを献上すれば許してあげる」 「んなっ……!!」 この事件を切欠に、快斗は志保を怒らせないよう極端に気を遣うようになった。かといって、変態的な趣味が無くなったわけではなく、俺に着ろと持ってくる物は全てあの阿呆の手作りになったのだった…(新一語り) end 快斗君がちゃっかり志保さまから写真を買ったことなど、新一さんは知りません。 |