と白





「なに朝からニヤニヤしてんだ、気色悪ぃ…」
「だってさー、ふふふ…v」

 先の大戦での功績を称えられ、新一は司令官へと昇進した。十代という若さでは異例の事だが、戦闘時の新一の活躍を見てきたザフト軍兵士らで異議を唱える者はいなかった。
 そして、新一が与えられた白服を着るのは今日が初めてなのだ。昨日は最後の赤服姿!と並んで写真を撮りまくっていた快斗だが、今日も今日とてカメラ小僧である。

「早く着てよー、新一v」
「ただ色が変わるだけだろうが…」

 呆れつつも着替えを凝視する快斗に若干の恥じらいを感じ、さっと膝ほどまで長さのある上着を羽織り腰のバックルを嵌める。新一は馴染んだ紅ではなくなったこと、強いては快斗と同じ色ではなくなった事にほんの少しの寂寥を味わい、快斗を振り返る。何を言って欲しいのかわからない。けれど、快斗なら今一番欲しい言葉をくれるような気がした。

「似合うよ、…新一」

 うっとりと、離れているのに耳に直接送り込まれたように腰に響く低音の声。

「やっぱり新一には白が一番似合うね…」

 肌の色と同じように染み一つ無い白い軍服。それは彼の清廉な魂を反映しているようで、その軍服は始めから新一に着て貰う為に白くあったようにさえ思えてくる。触ると己の手で汚してしまいそうで怖くて手を伸ばすのを躊躇らった。

「快斗?」
「…新一、こっち来て?」

 手招きをすれば、新一は迷いもせずに近づく。縮まる距離に胸を躍らせた。今更触れる事に躊躇したって仕方がない。元より、放す気などさらさら無いのだから。

「なんだって…っ……おいっ!」
「えへへ、捕まえた♪」

 新一を腕の中に閉じ込めて、ぎゅっと力を込める。突然の事に反論する新一だが、抗う様子はない。それに気をよくした快斗は背中に這わした手を怪しく動かしながら新一の耳に口付けた。

「…っ!……ばかやろっ…」
「おめでとう、新一。今日から俺の上官になっちゃうんだね」
「…快斗も、…昇進受ければ良かったじゃん。なんで蹴ったんだよ…?」
「俺赤服の方が好きだからさー」
「確かに…それお前に似合うけどさ…」

 うん、どの色よりも快斗には紅が似合う。華があって、情熱的で、時々子供のように無邪気な快斗。真面目な表情をしていれば、そこらのぼーっとした白服のおっさんよりずっと頼りになるし…大人の男っぽくてかっこいい…と思う。きっと惚れた欲目だけじゃないはずだ。園子や和葉もそう言ってたしな。


「新一にそんな風に言われちゃ一生コレ脱げないなぁ。それに…」
「それに?」

 きつく抱き合っていた身体を少し、顔をつき合わせる。快斗は新一の大きな眼に自分の笑顔を映して。

「主従関係あると燃えない?」
「は?」
「だから、普段は新一に敬礼とかしちゃってる俺が夜になると新一を喘がせてるってさ、一つの男のロマッ……いってー!!」
「真面目に聞いた俺がバカだったよ!」

 どかっ!と廊下まで響く衝撃音と共に快斗が腹部を押えて蹲る。
 新一は赤い顔を片腕で隠しながら蹲る快斗を尚もげしげしと足蹴にした。

「朝から身体が痛いよ新一さん」
「自業自得だ、ばーか」

 べっと舌を出すその仕草さえ快斗を煽るものでしかなくて、ああ、その舌吸いたい…と不埒な視線を向けた。快斗が行動に移すよりも早くそれに気付いた新一は。

「おら、いつまでも床にいねーで朝礼行くぞ」
「はっ、承知致しました!」
「そうそう、部屋出たらその調子で俺を敬えよ」

 即座に起立して敬礼をした快斗を見て、新一はくすりと微笑えむ。そして、…公な場でも快斗に偉そうな態度取れるのってちょっと楽しそうかも…、と人のことを言えない考えを廻らせていたのであった。


 駐屯しているザフト軍総勢数千人が集う朝礼で、司令官とパイロットが同じ席に座るはずもなく。当然のことながら途中で離れることになる。公の場では例え年が一緒でも馴れ馴れしく会話できるものではない。そういう処なのだ軍というものは。位が上であるほど、勲章が多いほど重宝される。
 そんな中で、前線で命を削るエースパイロットでいることを選んだのは。



「指揮する側じゃ自分の身体で新一を守れないから、なーんて言うと怒るんだろうなぁ…」
「黒羽、何ブツブツ言ってんねん?」

 快斗の呟きに反応したのは元エースパイロットであり銃殺刑を免れて現在緑服に降格してしまった服部平次だ。すり鉢状になったその大会議室は中央から上官が並び、端に行くつれて位が下がる仕組みで席が指定された為、近くになったらしい。

「よう、緑色。」
「相変わらず失礼な奴やな…ん?なんや顔にキズついてんで」
「え?ああ…」

 そういえば新一の蹴りが一瞬顔を掠めたような…

「うわ、血出てるし…」

 痛そうやわ…と顔を歪ませた平次に快斗はにっこりと微笑い。

「いいんだよ、愛の証だからv」

 そう幸せそうに言う快斗を見た平次はやっぱこいつよー理解できんわ…と諦めの境地に立ったのだった。

 そして朝礼中、初披露となった新一の司令官姿に多くの視線が集まり、それを見た快斗の機嫌が急激に悪くなっている事に気付いた平次は、独り冷や汗を流していたとか。




end





















白服の新一さん…考えただけで萌え死ぬ…!そして精神的にSなようです。※快新です
快斗くんと新一さんの位はどうしよう…中尉(その内大尉にしてあげる)と大佐でいいか(適当)
ここでも損な役回りなはっちょり(笑