オーナー・シェフ
〜至福の時〜










新一の家を訪れ、本を借りたことから上手い具合に新一の家に行ける口実を手に入れた快斗。

「新一〜、この間の本読んじゃったからまた借りに行ってもいい??」
「店に居る間は名前で呼ぶなっつったろ?」
「あ、ごめんごめん。オーナー、今日店終わってからお宅に伺ってもよろしいでしょうか?」
「よろしい」
「やったー!」

新一の返事に手放しで喜んで、善は急げとテーブルの片づけを済ませた。
閉店時にはいつも二人で後片付け。自分がバイトで入っていないときは他のバイトのやつとしているのかと思えば、一人でしているのだと言う。何故かと問うと、そいつは家が少し遠いからだと言った。
それだけのことで、自分が特別なような気分がして嬉しかった。

だって片づけしてるときの新一って、格好いいんだもんなー

いつもは味がわからなくなるからと吸わない煙草も、片付けの時には吸うのが習慣になっているらしく、咥え煙草で手早く厨房を掃除していく。こんな新一を見れるのは、最後まで店にいる自分の特権なのだ。バイトの面接(面接をしたのは新一ではなく何故かバイトだった)に来たときに、閉店時までできるかと聞かれて、内心面倒だと思ったが、今になってはそれが至福の時となっている。

「ぅえへへ・・・・・」
自分の分の後片付けは終わり、新一を見ながら零れた声に新一が不思議そうにこっちを見た。

「お前、幸せそうだな・・・今日結構ハードだったのに疲れてねーのかよ?」
片付ける手は止めず、快斗に聞く新一は少し疲労の色が窺えた。

「だってこれから新一の家行けるしぃv」
「そんなに本読みたかったのか。なら何冊か店に置いとくか?いちいち家来るの面倒だろ?」
「いや、全然大丈夫!店に置いとくと汚れるかもしんねーじゃん?それに新一の家で何読むか考えるの好きなんだ」

新一の提案にぶんぶんと頭を振って遠慮した。本を読むのももちろん目的であるが、新一の家に行くというのが重要なのだ。そこまでの道のりを新一の車で二人で話をし、新一の家でも少し話したりお酒を飲んだりする。その中で徐々に新一を知っていき、自分のことも知ってもらいたいのだ。

「お前がそれでいいならいいけどさ。よし、これで終わった。そっちはもう出れるか?」
「うん、いつでもオッケーだよ」
「じゃ、今日もバイトお疲れさん」
「お疲れ様でしたー♪」


火の元を確認して新一が鍵を持って店を出た。快斗は新一に頼まれて車を店の側まで運び、横付けにする。


「新一持ってきたよー」
「おう、さんきゅ」
快斗が助手席に乗り、シートベルトをしようとすると引っ張ってもベルトが伸びなかった。
「アレ?」
「あ、それな」
そう言って運転席の新一が身を捩り手を伸ばし、ベルトの出ているところをがちゃがちゃと弄る。

わあぁぁ、やべーこの距離。前から見たらキスしてるように見えるよ絶対。今暗いとこでよかった・・・・・

快斗の緊張を知らず新一はこれで大丈夫だとシートベルトを伸ばし、着けてやった。

「ちょっとそこおかしくてさー。お前意外乗せないから忘れてた」
「そーなの?」
ポと頬を染めた快斗に鈍い新一が気付くはずもなくさらに快斗を幸せにすることを言う。

「今のとこお前専用だな」
「やったね♪」
ちゃかした風に言って誤魔化したが、快斗は幸福の絶頂にいた。もういっそこのまま告ってしまおうか!と彼が早とちってもおかしくない。


ああ、もうこの人はなんてオレを喜ばせるのが上手いんだろう。

横でにこやかにお勧めの小説を紹介する新一を見て、至福の時間を噛み締める快斗であった。























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