人知れずバトル
「新一、トランプしよう!」
「やだ」
「じゃあ麻雀!」
「やだ」
「オセロ!」
「やだ」
「ウノ!」
「やだったらやだ!」
「なんでだよぉ〜??」
オレは新一と遊びたいのにぃー
せっかく忙しい中時間をみつけては工藤邸に通い詰めているのに、新一とじゃれ合えないなんて地獄だ!!!
「全部お前が勝つだろうが……」
だから嫌なんだと新一は苦虫を噛み潰したように顔を顰めた。
「あれぇ〜、新一くん自信ないの〜?」
「お前がおかしいんだ。俺は他の人間にはどれも負けたことねーよ」
「じゃあ一回だけでいいからトランプしよう!ねっ?」
「・・・・・・・・・本当に一回だけだからな」
新一は抱き着いて離れない快斗に溜息を吐いて一度だけの約束で了承した。
「じゃあ神経衰弱ね。これならオレも新一もどっちも対等でしょ?」
「そうだな」
本当にそうか?どうあってもこいつに勝てる気がしないのは俺が卑屈なだけか?
やはり気が進まない。トランプの場所と種類くらいは暗記出来るが、快斗の頭はきっと俺の及びもつかない次元で働いている。それが無意識にできる奴だから天才というのであろう。
「わかってると思うけど、手抜くなよ」
「はいよー」
カードをごちゃごちゃに並べながら快斗は間の抜けた返事をする。
始めは俺からカードに手をつけた。普通より格段にペースは早い。一度カードを捲り違うと直にまた裏返しにする。時々相手をかく乱する為にカードの位置を変えたりした。それでも快斗や俺が集中してすれば場所を暗記する事などた易い。
「はい、これで最後〜」
最後のカードの組を快斗が取ったところで勝負は明白だった。時間は計っていなかったが、無言でしていた為恐らく10分も経っていないだろう。
「やっぱりお前の方が多いじゃんか…」
「ズルはしてないよ?」
「わかってる」
うん、予想通りと言えば予想通りだ。一度と自分で言った以上もう一回とは言えない。けれど、やはりと言うべきか、俺の性格上悔しさは消せない。
「ムカつく」
「もう一回する?」
「しない!」
「ああ、新一・・・そんな顔してたら綺麗な顔が勿体無いよ」
よしよしと頭を撫でる快斗をきっと睨んで餓鬼のように拗ねる。快斗はきっとこんな俺を見て可愛いとでも思っているのだろう。顔が緩んでいる。
「俺はお前と対等でいたいのに、何してもお前のほうが上なんだ」
「そんなことないよ」
「今だって餓鬼みてーに剥れて、お前は保護者みたいだし。俺はお前ほど器の大きな人間じゃねーし…」
「器…?……ぷ、…あははっ!!」
「何笑ってんだよっ?」
「だってオレの器なんて小せーもんだぜー?」
「何でだよっ、いつも俺がどれだけ我儘いっても余裕かましてんじゃんか!」
「それは新一に対してだけ。他の奴がムカつくこと言ったり、まして新一に手を出そうものなら容赦ないよ」
「そうなのか……?ってもう笑うなよっ!」
「だって新ちゃん可愛いから〜。それに日常に勝負ではオレは新一に負け続け」
「お前が負けたことなんてあったか?」
「あいやー、気付いてないんだ?まずは怪盗キッドとして会った時に心奪われちゃって勝負に棄権せざるを得なくなったでしょ。それに付き合うようになってからも事あるごとに新一のフェロモンに負けて押し倒しちゃうだろ。後、新一に甘い物食べさせないと駄目なのに新一がウルウル眼で嫌だ、かいと。って言ったらそれ以上何も言えなくなっちゃうし、他にも…」
「ストップ!!」
これ以上喋らせると夜の生活の事にまで話が及びそうで焦って止めた。それはとても正しい判断であった。
「オレがいかに普段新一に勝てないか、わかった?」
「納得いかねーけどわかったことにしといてやる…」
だからもう拗ねるのは止めて、偶には日常の勝負でもお前に勝ちを譲ってやろう。まずは…
「何かして欲しい事あるか、快斗?」
その瞬間快斗の顔がぱあっと綻んだ。
こいつのこんな顔が見れるなら、偶には負けてやってもいいな。うん。
.end
とっても謎。