焔の瞳





「シン!聞いているのか?シン!」
「はいはいちゃんと聞いてますよザラ隊長」
「お前は本当に…」
 あーあーまたアスランさん溜息吐いてるよ。俺のせいだけど。
「わかってますよ、ディスティニーの機体整備のチェックを自分でもやれって話ですよね?」

 ここはザフト軍本部。
 あの日ラクス・クライン率いるアークエンジェルの提唱した“ザフト軍”再生の結果だ。まだまだ構成段階だが、ラクス・クラインの元々の人気も手伝って、比較的順調にザフト軍は生まれ変わりつつある。
 ザフトと言っても以前とは変わったことがたくさんある。何と言っても議長という立場の人がいない。代表という立場にはイザーク・ジュール(あまり面識がない)がついたらしいが、大きな権限は持たない。あとは銃殺刑がなくなったとか、全体的に軍隊から一歩引いた組織になったというのか。まぁ、実際のところ俺にはよくわからない。
 そんな訳で、あれからアークエンジェルの数名のクルーがこちらに合流してアスランさんがまた俺の上司になったのだ。これが五月蝿いのなんのって…

「シン!!」
「はい今からチェックに行くであります!」
「クス、アスランそんなにしつこく言わなくてもシンくんなら大丈夫だよ」
「キラ!またお前はそんな恰好をして…」

 柔らかな声に敬礼した手が固まった。同じくザフト軍にいるキラさんがオレンジの作業着を着てバインダーを持って立っている。にっこり微笑まれたけど、ふいと顔を背けて俺は機体の方へ歩き出した。
 背後ではアスランさんが何故指定の軍服を着ないんだ!?とキラさんに言い詰めている。あの人は変わらずの苦労人体質のようだ。当のキラさんはいつもいい様に受け流している。伊達に長く付き合ってないということか。

 顔を合わせるようになって短くない日が経つが、未だキラさんには慣れない。あれだけの戦いをして、あまつさえ殺しかけたのだからそれも当然なのだが。相手は何事もなかったかのように接するので、俺だけが嫌って避けている様に周りには映るだろう。本人もそう思っていると思う。あのアスランさんも。
 だけど、実際は違う。


 後ろを振り返ると、キラさんの肩に手を置いて彼を促しながらこちらを見遣るアスランさんと眼が合った。さっさとしろと目で言って俺を見る。キラさんに視線を戻した彼の、その目の違いに見てるこちらが恥ずかしくなる。愛しむ様に、包み込む様に、穏やかに。二人の関係が友人に止まらない事は知っている。
 アスランさんが俺を牽制しないのは俺がキラさんを嫌っていると勘違いしているから。彼に危害を加えないかと冷や冷やしている気配もある。

 キラさんを見てイライラするのは確かだけど、それは以前と違う理由からで。

 憎しみは正反対の感情に変わって。

 むしろあんたから奪いたいと思ってる。なんて気付いているのかな?

 細い肩に回る見慣れたレッドのあの人の腕。それを見て不思議と俺は笑っていた。




end






ひとまず終わりです。カプ要素はないのに書いててやたら楽しかったです。